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産業用不動産への投資でオンリーワン 三菱商事UBSリアルティはなぜ果敢に挑戦できたのか?ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(3/5 ページ)

産業用不動産に特化したJ-REITを展開する三菱商事UBSリアルティ。同社はどうして他社が参入しない分野にビジネスチャンスを見出したのか。そのユニークな戦略を聞いた。

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常に新しいものを提案する開発力を投資家が評価

大薗 事業で使っている不動産を資金化できることを知らない会社が多いということですが、特にどういう会社がIIFのメリットを期待できるのでしょう?

一橋大学大学院 国際企業戦略研究科の大薗恵美教授
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科の大薗恵美教授

 2014年1月に、JPX日経インデックス400(JPX400)という新しいインデックスが発表されました。このJPX400にどのような会社が含まれているかを調査したのですが、IIFの顧客企業が多いことに気付きました。また三菱商事に開発素地を売っていただいている会社も多くありました。

 つまり、資金効率や資本効率に敏感な企業は、アセットファイナンスをよく理解していて、ある程度バランスシートを最適な資本構成の範囲内でスリム化されているのです。こうした会社を探してIIFのソリューションを提案すれば、その会社は大きなメリットを享受できます。

 これまでは、各企業の財務諸表を読み込んで、このタイプの企業はほかにどこがあるかをくまなくチェックしながら、アポイントを取り、提案をして、物件を取得してきましたが、JPX400により、ある程度目星が付けられるようになったので、IIFにとって非常に有用なインデックスと言えるでしょう。

大薗 これまでは、資金効率を改善できる余地の大きい会社を1つずつ分析して見つけていたのですね(笑)。

 日本の経済が良くないときには、キャッシュニーズが中心だったので、お金を作りたい企業自らがIIFを見つけてくれて、CRE戦略提案のチャンスを作ってくれていました。現在はこれまでとは逆に、資金効率に敏感な企業を探しています。IIFの投資部門の担当者は、財務諸表を読み込み、企業の状況を把握しないとソーシングそのものができません。そこで、プロフェッショナルな人員の育成が必要なのです。

大薗 お金が必要とはいえ、つぶれてしまっては元も子もないので、その見極めが重要ということですね。

 世の中に無かったサービスを創出するためにはプロフェッショナルの育成が必要ですが、提案型の営業の文化が既に三菱商事にあったということですね。事業を形にしていく上で難しかったのはどのような点でしょうか。

 切り替えです。商業施設REITはいわゆる不動産業の延長のJ-REITで、IIFは金融寄りのJ-REITだと思っています。産業系不動産でも不動産マーケットに売りに出ていたりしますが、それはIIFの対象にはなりません。例えば、2年後には倒産しそうな会社や、田舎の工場で汎用性がないなどが理由です。

 IIFは、もっと企業寄り、金融寄りに、企業の資本戦略に根ざした提案をしているのですが、それをマーケットに理解してもらうのが困難でした。失敗を繰り返しながら、現在のIIFを作り上げています。

大薗 投資家としては、パフォーマンスさえ出れば問題ないのでは?

 投資家は安定感を求めるので難しい問題です。パフォーマンスが出ていても、マーケットの状況が悪くなるとクラッシュするファンドもあるので、そうならないことが必要です。利回りだけではなく、ある程度の安定感、あるいは緊急時の資金手当ができるということも重要となります。

 IIFの希少性、面白味を評価していただいている投資家も多く、毎年新しいアセットカテゴリーを増やしています。先ほどお話ししたタンクターミナル以外にも、地方自治体が所有していた土地など、常に新しいものを提案できる開発力を評価してもらっています。

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