Industry 4.0 10年後を見据えた発展途上の取り組み:視点(1/3 ページ)
Industry 4.0 は、IOTを核に、「繋がる」、「代替する」、「創造する」という3 つのコンセプトで製造業の復権を狙っている。
変革の背景
21世紀に入ると、日本と同様に欧州でも産業の空洞化が叫ばれてきました。新興国の低労務費を梃子にした低価格攻勢、性能・スペックの急速なキャッチアップによって、先進国の製造業は徐々に劣勢を強いられてきたのです。また、就労人口の減少や高齢化、熟練技術者の技術継承も大きな課題でした。
そうした中、北米ではエネルギーコスト低減による生産性向上を実現したシェール革命やIT産業によるイノベーションで、日本では地道な改善の積み重ねで、産業の空洞化に立ち向かってきました。
一方、ドイツでは2000年代後半から産官学が集った国家情報化戦略が始まったのです。メルケル首相が旗を振り、機械、電気電子、情報通信の3工業会を束ね、業界横断的な製造業の革命に取り組んだのです。
政府が資金を拠出し、数百の大学や企業が技術開発や規格作りに邁進しています。こうした取り組みがIndustry 4.0 と呼ばれるようになったのは、弊社ローランド・ベルガーを含む調査機関がドイツ政府やこれらの業界団体向けに報告書をとりまとめたことがきっかけです。2011年には独見本市ハノーバーメッセで初めて世の中に明らかにされました。
Industry 4 .0 が目指すもの
Industry 4.0 は、IOT (モノのインターネット) を核に、「繋がる」、「代替する」、「創造する」という3 つのコンセプトで製造業の復権を狙っています。(図A参照)工場を中心に材料調達から設計、生産、物流、サービスまで一連の企業のサプライチェーン全体を繋いで、ロボット、3Dプリンタ、自動搬送車などで煩雑な業務を代替し、人は製品やサービスに付加価値を与える仕事に特化できるようになります。
電動化、再生可能エネルギーの効率活用により化石由来のエネルギーの消費も格段に抑制されます。また、各種センサーからのデータがビッグデータとして集められ、リアルタイムに分析され、生産性の最大化を追求するのです。
作りたい製品に応じてラインを組みかえ、ボトルネックを常に見つけながらつぶしていく、メンテナンスタイミングを事前に予知して工場を止める時間の最化も実現するのです。さらに、集めたデータを開発や生産にフィードバックして、商品・サービスの付加価値向上に活かす取り組みも始まっています。
こうした取り組みを実践する企業の多くは、「今は第一段階が始まったばかり、描いている将来の姿を目指して着実に進む。今後の10年で実現する生産性向上は40〜60%」と考えています。また、既にお気づきの通り、前述した一つひとつの取り組み自体は決して革新的なものではありません。多くは過去に機能別に様々なコンセプトで謳われてきたものです。
これらの取り組みが一つの骨太な目的に向けて体系的に組み立てられたときにこそ真の力を発揮するのです。弊社では現時点で産業全体のバリューチェーンのうちIOTが影響している割合は25%と捉えています。Industry 4.0 が残りの75%にも広がった世界を創造してください。間違いなく革新と呼べる世界へと変貌しているのではないでしょうか?
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