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個々が才能を発揮し「一隅」を照らし出す気鋭の経営者に聞く、組織マネジメントの流儀(1/2 ページ)

才能を自覚することで巻き込む力が生まれ、自分にできないことを認めると素直に周りに頼れるようにもなる。結果として、大きな仕事を成し遂げられる。

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 ラクーンは、約1000社のメーカーと、約4万6000店の小売店を結ぶB to Bのオンライン問屋「スーパーデリバリー」を運営。サイト上ではアパレル・雑貨など約46万点の商品を扱っている。また、売掛保証サービス、掛売り決済代行サービス、商品の受発注を一元管理するクラウド受発注サービスと企業間取引に特化したサービスを4つ展開している。

 いずれもユニークなサービスで、そのうちの3つは社員が企画・立案したものだ。個人が才能を発揮し、活躍する組織をつくった小方功社長に、マネジメントの肝とを聞いた。

自分の考えを伝えれば、人は自然と集まってくる


ラクーン 小方功社長

中土井 ラクーンが手掛ける4つの主軸事業は、いずれもユニークなサービスだそうですね。新しい案はどのようにして生まれたのでしょうか?

小方 最初に立ち上げたアパレル・雑貨のオンライン問屋は、流通業界に「一生懸命やれば売れる」「元気よくやれば会社がよくなる」という考えが根強いと感じたことがスタートのきっかけでした。当時の流通は文系が主体となり、勘と経験と度胸で動かしていました。そこに科学という視点を持ち込めば、もっと効率よく売れるのではないかと考えたわけです。

 そこが軸となって2つ目以降の事業が派生的に生まれました。ただし、後発の3つは私ではなく社員が企画したものです。流通を科学する、世界初のことをやるという大きな枠組みのなかで、彼らが生み出し、作り上げたものともいえます。

中土井 小方さんが引っ張るのではなく、社員と一緒に作ってきた事業ということですか?

小方 はい。組織を動かすためには、リーダーがスタッフの役割を決めて、評価しないといけないと考えている人が多いのですが、それは不自然だと思っています。自分がやりたいことを伝えて、そこに人が集まってくるほうが自然でしょう。私が考えるリーダーの役目は、自分が何をやりたいか、どんなことを楽しいと感じるか伝えることだと思っているのです。

中土井 「この指とまれ」の声に、興味を持つ人たちが集まってくるタイプの組織ですね。

小方 そのとおりです。例えるなら、社長はキャンプのリーダー、組織はキャンプです。「キャンプ行かない?」とリーダーが提案すると、「いい場所あるよ」と教えてくれる人、テントを持っている人が現れます。美味しい肉を持ってくる人、炭を起こす人、皿を洗う人が現れます。最高のキャンプをしようという気持ちが共有されて、みんなが自主的に動くわけです。ラクーンの事業も、私が流通を科学したいと思ったのが「この指とまれ」であり「キャンプ行かない?」という呼びかけです。そこに社員が集まったのです。

個々の違いを生かせる仕事が「天職」

中土井 会社というキャンプのなかで、個人が能力を発揮するといった考え方は、いつから持っていたのですか?

小方 起業時にはそう考えていたはずです。というのも、私は京都の大原三千院で「一隅を照らす」という最澄の言葉と出会い、脱サラを決意しました。いろんな人がいて、それぞれが足下を照らすから、世の中全体が明るくなると解釈しました。この言葉が心に響いたということは、そのときすでに個人が自分の能力を発揮することが大切だと考えていたということです。

中土井 なるほど。とはいえ「キャンプ行かない?」という呼びかけに手を挙げるためには、自分に何ができるか分かっていなければなりませんね。

小方 そうですね。世の中には自分の才能を知らない人が多いと思います。それは、才能に気づくきっかけが少ないからではないでしょうか。きっかけは会議や研修では作り出せません。ですから当社では、さまざまな社内イベントを行い、才能に目を向けられるような環境を作っています。

 例えば、書道のコンテストを開き、金賞、銀賞を選びます。創造力鍛錬のために、創造力コンテストも行っています。ラクーンの事業と書道は直接的には関係ありませんが、字がうまい、文章力があるというのも1つの才能です。それに気づき、目を向けることで、もしかしたら新しい事業の案が浮かぶことがあるかもしれないのです。

 創造力コンテストでは、3回優勝した社員がいます。彼はこの経験を通じて、自分が持つ伝える力を認識するとともに、自分の言葉が周りに影響を与えているのだと実感したそうです。それぞれが才能を自覚すると、「キャンプ行かない?」の声に率先して手を挙げられるようになりますし、逆に、自分にできないことを素直に周りに頼れるようにもなります。その結果として、大きな仕事を成し遂げることができます。

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