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デジタルによる「対話」の革新視点(3/4 ページ)

デジタルの進化は人間のコミュニケーションのあり方を変えた。これまでの購買情報を基盤としたユーザー接点は飛躍的に拡大。IoT等により、常にユーザーに寄り添う企業の存在を可能にした。

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Roland Berger

2、新たな「対話」モデルに向けた視点追加

 そして伝える自分に自信が付いたらユーザーとの対話の場を構築する。(図A参照)そのデザインには3 つのステップを踏まえる必要がある。


これからの対ユーザー接点

Step1 : 時間軸でユーザーとの繋がりを捉え直す

 ……これまでのデモグラフィカル属性やサイコグラフィカル属性とは異なるアプローチを取る。まず、同じユーザーを時間軸で見てみる。ユーザーの気持ちやニーズはタイミングによっても変わる。その変化に寄り添いながらユーザーを追えば、提供できていない穴が無数に見えてくる。そしてその穴をどのような価値で埋めるかを検討する。

 この時、その価値を複雑で情緒的な言葉へ置き換えず、より根源的な「WANTS (=根源的欲求)」で考える。根源的欲求は生き物である限りそれほど多くのタイプは存在しない。(図B参照)


リードタイムにおける発想の転換

 この基盤価値、本質価値、付随価値のいずれが市場としてコアとなるステージにあるかを見定め不足を見極める。

 不足は主に3 つの視点から探る。

 1つ目が既存の価値をより専用品として細分化する方向。「朝専用コーヒー」や「布団専用掃除機」がこれにあたる。

 2つ目が二律背反であると思われていた価値を両立させる。「ビールにおけるコクとキレの両立」や「おいしさが基本の飲料での高揚感の提供」などだ。

 3つ目が、2つ目の両立価値が時代とずれてきた時に逆に切り離すという方向。「楽しむ」価値の三構成要素(おいしさ、リラックス、高揚感) の全てを両立させるビールという飲料が逆にキリンフリーで高揚感を切り離したことも、時代の要請を捉えてのことだ。

Step2 : 価値提供の抽斗をモノからコトへ広げる

 次にその提供価値をどのように提供するかを案出しする。例えばメーカーの製造段階でもユーザーに対する価値提供は始まっている。温度管理が「おいしさ」に重要な商材であればIoTの活用で製品の温度変化を工場出荷から時系列でユーザーが確認する仕組みを提供することもできる。「安心」価値が重要であれば、製造段階での当該ラインの様子をユーザーがチェックする仕組みが可能かもしれない。

Step3 : 中長期「全社」価値提供ロードマップへ纏め上げる

 提供価値の穴を識別したらきっとそれは無数に存在する。それを既存製品と役割分担、最終的に中長期的な全社の提供価値のロードマップとして一枚の絵・道程に作り上げる。

 これらの流れに則りまずは視点を変える。そうすると、これまでやってきた領域はもはや点にしか見えなくなり、ユーザーに価値提供が不足している穴が無数に見つかる。そしてその穴をユーザーとの「対話」により解決していくそのためのプラットフォームを構築する。そのプラットフォームが現在構築しているオウンドメディア等を内包し全体戦略へと昇華していくことになるだろう。

 これらによりユーザーにとって「必要なとき以外、側にいないで欲しい相手」から「いてもかまわない相手」、更には「側にいつも寄り添っていて欲しい相手」へと進化する。相互の信頼感を前提とした日常生活における欠かせないパートナーとしての位置づけを確立するようになる。

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