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デジタル時代の次世代顧客接点の構築視点(2/3 ページ)

「デジタル」は、圧倒的な量と質の顧客との「直接の対話」を可能にした。成熟市場の中での、企業活動の競争力や新しい事業を生み出すきっかけになる。

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Roland Berger

(1)顧客との繋がりの構築・強化

 日常を通じてできるだけ頻度高く、長く、顧客と繋がっている状態を作り出すことが、顧客理解の解像度を高める情報取得に結びつく。顧客のエンゲージメントを高める第一歩である。

 これまでの商品・サービスの提供の瞬間だけでなく、「使用・消費」や「認知・検討」といった顧客の日常のシーンに対して視点を拡げ、どの様な繋がりを持ちうるか、どこに体験価値の向上の余地があるのかを思い描き実現するのだ。

 そこから得られた情報によって、これまで「点」でしかとらえられなかった、顧客一人ひとりの行動が把握できるようになり、顧客のニーズ・タイミングが見えるようになる。

 顧客との繋がりはリアル/デジタル双方で構築していくべきものであるが、特に、デジタルの活用は、それを強化するだけでなく、量と質で、顧客理解の解像度を上げていくための武器となりえる。

 例えば、好事例として、アパレルECサービスのZOZOTOWNを手がけるスタートトゥデイが展開しているアプリサービスの「WEAR」が挙げられるだろう。メイン機能は、ファッションコーディネート投稿とその閲覧であるが、自分が持つアイテム、またお気に入りのモデル・一般人を登録することで、アイテム・ブランド・ショップ・ファッショニスタ等、様々な軸で自分好みのコーディネート画像を楽しめ情報収集にもなる。

 更に、他人のコーディネートを参考にしながら、そのままZOZOTOWNで購入することもでき、顧客にとっての利便性は高い。顧客にとっての「洋服のコーディネート」というシーンを切り取り、日々の顧客との繋がりを構築すると共に、顧客の体験価値を向上させているのである。「WEAR」経由の売り上げはZOZOTOWN全体の3割にも匹敵とするといわれる。

 同時に、今までは、「購入」という接点を起点とした情報しか見えなかったのが、洋服選びや使い方といった「利用」データも組み合わせることで、より解像度を上げてカスタマージャーニーを分析することができるようになったのである。

(2)気づきを生む「個客単位」の見える化

 顧客との繋がりを通じて情報を取得したら、次に重要なのは、「個客」単位での見える化を行い、一人ひとりが持つニーズ/タイミングの気づきを得ていくことである。あらゆる行動データを「個客」単位で一元化させていく。そして、一人ひとりの顧客を多面的な視点で見える化することで今まで気づけなかった傾向・特性を発見できるのである。

 集めたデータについて、様々な切り口から分析・解析することに意義がある。ここで言う切り口とは、打ち手につながる「気づき」が得られる切り口である。例えば、次のような切り口が考えられる。「顧客の購買パターン」、「顧客セグメント毎のニーズ」、「顧客毎の欲しいタイミング」、「カスタマージャーニーにおける行動パターン」、「カスタマージャーニーでの空き時間」、「顧客のニーズ・タイミングとサービス提供のズレ」、「ライフステージにおける消費」等である。こうした分析・解析をすることによって、“誰が、何を、なぜ、いつ、どこで” 求めているのかということが把握でき、まさに「個客単位」の見える化になるのである。

 尚、見える化を加速させるためには、新しい技術や外部企業との活用も視野にいれるべきである。解析能力が高いベンチャー企業との提携・委託、パブリックDMPのような外部データとの組み合わせによるデータ補完、判断や予測をしていくためのサポートとしての人工知能の活用といったことにもチャレンジしていくことで、よりイノベーティブな切り口の考案に、集中していくことができる。

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