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生産性向上に向けたデジタルの活用方法視点(3/4 ページ)

昨今はさまざまな業務生産性に寄与するデジタルツールが展開されているが、自社内での業務整理ができていないままではその効力は最大限に発揮されない。デジタルと上手に向き合うためのポイントとは?

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Roland Berger

(2)ロスの低減

 2つ目のブロックは、ロスの低減である。この解決策としては、日常業務においてロスを生み出す業務を特定し、徹底して属人的な判断を排除し、バラつきを抑えることである。先行事例として、アパレル業界におけるシマムラの取り組みを紹介する。

シマムラの徹底した業務自動化

 国内市場が縮小する中、厳しい戦いを求められているアパレル業界で、商品管理の精度が大きく利益率を左右する。全国に散らばる店舗に対し、どのタイミングで、どの商品を、どこに、どれだけ配送するか、また最終消化率を高めるために、どのタイミングでどれだけ値下げするか、こういった複雑な判断をこれまでは人に委ねてきた。

 それ故に商品管理者は多くの時間を分析に費やしているのが現状だ。しかし、シマムラは立地条件や商品別・店別在庫の消化率等のビッグデータを活用して、在庫管理・発注・店間移動・値下げといった指示の自動化を実現したのである。

 ここで重要なのは、「人に判断させないポイント」を明確にすることだ。自社の業務フローを見直したうえで、分析に多くの時間を費やし、属人的な判断故にムラが多い、その反面クリエイティブさが求められない業務においては徹底的に標準化を図り、一定のロジックによって最後の判断のボタンを意思決定者が押すだけの状態まで持っていくのである。この部分に過去の取り組みをデータとして蓄積し、ベストプラクティスと結びつけるデジタル化を導入する。

 一方、標準化の水準を高めに設定しすぎてもいけない。完璧を求めるとデジタル化の投資に対するリターンが得にくくなるからだ。あくまで多発するロスを防ぐ、「負けることのない戦い方」を念頭に置いて進めることを忘れてはならない。

(3)付加価値の向上

 3つ目のブロックは、付加価値そのものを高めることにある。(2)のロスの低減とは異なり、当該ブロックは「人に判断させるポイント」かつ、「クリエイティブさが求められる業務」においてより多くの刺激を取り込み、アウトプットを進化させることが求められる。

 これは実際にデザインシンキングの講義で行われている事例だが、30秒ほどの動画を見て、十数個ある間違い探しをする。この結果で興味深いのは、1人では6〜7個の間違いしか見つけられないのだが、5人1チームで取り組んだ場合、1人が見落としたポイントを互いに補足しあい、チームとしては15個以上の間違いに気づく点である。この取り組みは付加価値創出の本質を捉えている。つまり、いかに異なる刺激の引き出しを持てるかということであり、それは今後の企業における競争ルールの1つになるといっても過言ではない。

 では、具体的にはどのようにして付加価値を高める取り組みを企業に埋め込むか。必要な4ステップを紹介する(下図C参照)。

STEP1:必要な刺激のタイプを見極める

 自社の製品・サービスにおけるバリューチェーンを振り返り、どのような価値が今後求められるのか、その価値はどのようにして生み出されるのかを整理したうえで、刺激を与えるべき部門・業務および、必要な刺激の質を見極める。

STEP2:刺激をポートフォリオ化する

 STEP1で整理した刺激をどのようにして得ることができるのか、社内の他部門や社外の協業相手および、マッチングプラットフォーム等、必要な刺激を与えてくれる所在を明らかにする。第1ブロックで持つスキル・ナレッジを「見える化」しておくことは、社内において誰がどのような刺激をもたらしてくれるかが分かるという点でも大きなメリットとなる。

STEP3:刺激に触れる時間を業務にはめ込む

 当社の例ではあるが、ローランド・ベルガーでは、「刺激の日」という取り組みを始めた。これは、日常から離れ、異質な価値観に触れる機会を制度化したものである。新しい刺激を得て、業務に役立てるだけでなく、人間的な成長も促していこうという狙いもある。

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