エネルギー需要は長期的にも成長が見込まれ、その多くを中国、インドを含むアジア諸国がけん引する。需要が成長する中で、エネルギー業界を4つの大きなトレンドが変えていく。4つのD、すなわち、Decarbonazation(低炭素化)、Decentralization(分散化)、Deregulation(規制緩和)、及びDigitalization(デジタル化)である。
そのような中で大幅に増加するアジアのエネルギー需要を支えるために、幾つかの対応が必要になる。1つは、エネルギー供給に関して、高効率の火力発電で大規模な需要拡大に対応しながら、他方で低炭素化に向けた再生可能エネルギー導入、拡大も推し進めること。もう1つは、これまでは資源の輸出国であったアジア諸国にこれからは資源が流入していくことになるために、エネルギーのフローが変化していく。その中で、エネルギーセキュリティを確保し、かつ、安価な調達を両立すること。
これらの求められる対応は、日本の企業にとっても事業機会をもたらす。すなわち、高効率の火力発電所のインフラ輸出、再生可能エネルギー発電とそれを中心とした分散型エネルギーシステム、エネルギートレーディング、小型LNGを用いたエネルギー供給システムの構築・導入などが新たなビジネスチャンスとなるであろう。 縮小する日本市場、競争激化でシェアと収益性の低下がまぬかれない日本市場は何とか守りつつ、アジアで新たな機会を捉えていきたい。
世界の一次エネルギーの消費は、2030年までに17%増と大幅に伸びる見通しである。2030年断面では、非OECD諸国が一次エネルギー消費の70%近くを占め、中国とインドを含むアジア諸国が2030年に向けたエネルギー消費の増分のほとんどを占める。
中国のエネルギー需要は2015年から2030年の間で約25%増加し2030年には中国の需要がヨーロッパのほぼ倍、米国のそれを50%以上上回る規模になる。インドでも需要が約48%も伸び、2030年にはアフリカ全体の需要を上回るレベルである。エネルギー効率の向上も進むものの、人口増加と産業化の進展がエネルギー消費を押し上げていくと見られている。(図A参照)
燃料を見ると、化石燃料が一次エネルギーの主要なソースではあり続けるものの、全体としてのエネルギーミックスは変化していく。環境規制が強化される中で、石炭や石油がそのシェアを落とし、他方で化石燃料の中では相対的に低炭素であるガス及びカーボンニュートラルなエネルギー、すなわち原子力と再生可能エネルギーがシェアを拡大していく。再生可能エネルギーの成長率は最も高いが、シェアは10%に満たない。
生産・供給側は、ロシアと中東が主要な化石燃料の輸出地域であり続けるが、幾つかの変化が想定される。米国では、主にシェールによる石油とガスの増産がそれぞれ2035年に向けて40%程度、60%程度が見込まれている。一方で需要がほぼフラットに推移するとみられることから、2021年ころにはエネルギー自給国となる見通しである。さらには、天然ガスはすでに輸出を開始しており、石油に関しても2029年に輸出国に転じる見通しとなっている。
中国では、化石燃料の生産拡大が継続し、2035年には中国が世界第2位のシェールガス生産国、さらには米国を抜いてシェア31%の世界最大の原子力発電国となると見られている。しかしながら需要拡大に追い付くことはできず、世界最大のエネルギー輸入国となる。EUは、一次エネルギーの生産量は2035年に向け10%減少する一方、再生可能エネルギーはシェア36%で最大の発電源となる。
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