テクノロジーが自律的に拡張する時代に、いかにビジネスの勝機を捉えるか:NTT DATA Innovation Conference 2018レポート(2/2 ページ)
人類は、歴史上何度かの転換点を乗り越えて進化を続けてきた。コンピュータがあらゆる領域で人類を超えるシンギュラリティの到来が叫ばれる今、破壊的に成長を続けるテクノロジーを企業はいかにビジネスに取り込んでいくべきなのか。
AIをビジネスの勝機にするには
このように、AIが進化する中で、いかにしてビジネスの勝機を捉えていったらよいのだろうか。岩本氏は、「“Crack the Shell(殻を破ること)”だ。独自性の高い着想のためには、既成概念という思考の殻を破り、ゼロベースで考えることが重要である。とはいえ、一言で殻を破るといっても、そう簡単なことではない。そこで、サービスを受ける顧客の本当の意味でのベネフィットを考えることが有効になる」と話す。
例えば、EC分野の先駆的な企業であるアマゾンでは、注文のハードルを下げる取り組みとして、ボタンを押すだけで注文が完了する「Amazon Dash Button」や、アマゾンへの注文のみならず、家庭内に接続された機器のコントロールが可能なスマートスピーカー「Amazon Echo」など、さまざまなアプローチを展開している。
世界のスマートスピーカー市場予測では、2017年の出荷台数は2400万台に上り、シェアはアマゾンが70%、グーグルが15%と予測されている。アマゾンの勝因の一つは、自社の価値だけでなく、顧客にいかにベネフィットを与えることができるかに着目し、熟考したからである。顧客視点のベネフィットに着目するというのは、アマゾンのような視点を持つことだ。
「顧客は“便利!”と感動したものが、“あって当然”の状態になると、ベネフィットがすぐさま移ってしまう。こうした変化を支えていくのも飛躍的に進化するテクノロジーである。テクノロジーが実現できるものに、もはや制約はない。“Everything Possible”こそが、テクノロジーの開く未来である」(岩本氏)
テクノロジーはベネフィットの「ふ卵器」
岩本氏は、「絶え間なくテクノロジーが変革する時代において、どのようにビジネスに取り組んでいくかの例えとして、殻を破るという話をした。現在のテクノロジーはまさにベネフィットの“Hatchery(ふ卵器)”である」と話す。
NTTデータでは、産業の情報化とそれを中心に発展する社会に対し、今後3年から10年の間に大きなインパクトを与える将来の変化を捉えるべく、2012年から継続的な調査を実施し、調査結果から導き出した近未来の社会を描いた「NTT DATA Technology Foresight」を毎年策定している。
NTT DATA Technology Foresight 2018では、世界に変化をもたらす重要課題60と、世界に変化をもたらす革新技術98に対してPEST分析を実施し、4つの「情報社会トレンド」と、8つの「技術トレンド」を策定している。
情報社会トレンド
- 個の影響力拡大が社会の変革を促進する
- オープンな連携が新たな社会の仕組みを生み出す
- 情報の持つ価値の活用がビジネス再構築を加速する
- フィジカルとデジタルの融合が意識や行動を変化させる
技術トレンド
- 人工頭脳の浸透
- 協調志向オートメーション
- 超融合インターフェース
- 持続可能なデータ活用
- 生命課題への挑戦
- サイバーインテリジェンスの結集
- ITインフラの多様な進化
- イノベーションデザイン
講演では、技術トレンドの「協調志向オートメーション」の具体例として、「SHARPロボホン向けの手話通訳アプリケーション」がビデオで紹介されたほか、「超融合インターフェース」の具体例として、御嶽山と東京駅周辺の「AW3D高精細デジタル3D地図」がビデオで紹介された。さらに講演の最後には、NTTデータが考える未来の世界のビデオも紹介されている。なお、NTT DATA Technology Foresight 2018の詳細は、NTTデータの特設サイトで公開されている。
岩本氏は、「パーソナルコンピュータの父と呼ばれる米国の計算機科学者、アラン・ケイは、“The best way to predict the future is to invent it.(未来を予測する最善の方法は未来を開発することだ)”という言葉を残している。私自身もまったく同じ考えであり、NTT データはこれからも世界中の顧客とともに未来を創る取り組みを展開する」と話し、講演を終えた。
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