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組織におけるシナリオプランニングの実践方法――シナリオ詳細化とアクション検討VUCA時代の必須ツール「シナリオ思考法」(1/2 ページ)

テーマに沿って、完成したシナリオを詳細化し、未来のことを元にして今からの行動を考えていく。

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 前回の記事では、シナリオ作成の一般的なプロセス(図1)のうち、4、シナリオマトリクス作成までを解説しました。ここまでのプロセスで、長期的な未来についての複数のシナリオが完成しました。


図1:シナリオ作成の一般的なプロセス

 今回は作成したシナリオを詳細化する「シナリオ分析とストーリー作成」(図1の5番目)と、完成したシナリオを元にしてアクションを検討する「アクション検討」(図1の6番目)を解説します。

シナリオマトリクスの詳細化プロセス

 5番目のステップ「シナリオ分析とストーリー作成」は、どちらも完成したシナリオマトリクスの内容を詳細化する目的で行います。

 このうち「シナリオ分析」は、その名の通り分析的に詳細化するステップです。それに対して「ストーリー作成」は、完成したシナリオの世界観をストーリーで表現することで、感情面に訴えるような観点から詳細化するステップです。

 まずはこれら2つのステップの詳細を確認した上で、使い分けを紹介します。

シナリオ分析の考え方

 「シナリオ分析」のステップのイメージを表したものが図2です。


図2:シナリオ分析のイメージ

 シナリオマトリクス作成のステップで作成したシナリオには、テーマを元にして描いた幅広い世界が含まれています。しかし、実際のプロジェクトでは、作成したシナリオを元にありとあらゆるものを検討することはまれで、プロジェクトの目的に沿って、自社の事業や組織に関するテーマについて検討することが一般的です。

 そこでシナリオ分析では、自分たちが考えたいテーマに沿って、完成したシナリオを詳細化します。

 例えば、教育関連の事業を営んでいる企業が、今後の自社の事業展開を考えていくためにシナリオプランニングのプロジェクトを行っていくのであれば、このステップでは次のような問いを立てます。

  • 10年後のことを考えたそれぞれのシナリオ(4つの世界のこと)において義務教育はどうなっているだろうか?
  • それぞれのシナリオにおいて学習塾や予備校といった民間の既存の教育ビジネスはどうなっているだろうか?
  • それぞれのシナリオにおいてテクノロジーが教育にどんな影響を及ぼしているだろうか?

 このような問いを立て、完成した4つのシナリオにおける回答を考えていくことが、シナリオ分析の進め方です。

ストーリー作成の考え方

 ストーリー作成は、完成した4つのシナリオの世界観をストーリーで表現するステップです。

 完成したシナリオをストーリーで表現することで、シナリオプランニングのプロジェクトにかかわっていない人でも、シナリオの世界観を理解してもらいやすくすることができます。

 ストーリーの作り方はそれだけで一冊の本になるようなものですので、ここでは詳しくは紹介しません。シナリオプランニングのストーリーだからといって、通常のストーリーテリングなどで用いられているやり方と大きく変わるわけではないので、詳しく知りたい方は関連する書籍を読んでください。

 あえて1点だけシナリオプランニングらしいストーリー作成の注意点をあげるとすれば、シナリオプランニングではストーリーを「すでに起きていること」として表現する点です。

 シナリオプランニングでは未来のことを考えているので、ストーリーでも「10年後は○○の状態になるでしょう」というように、未来のこととして表現したくなります。しかし、臨場感を持って未来の世界を理解してもらうためには、SF映画のように「すでに起きていること」として表現することを意識してください。

シナリオ分析とストーリー作成の使い分け

 どちらのステップも等しく重要ですが、実際のプロジェクトでは、必ずしもこの両方のステップを行うわけではありません。

 経験的には、シナリオ分析のステップはどのようなプロジェクトでも必ず行います。この連載の第3回「プロジェクトの立ち上げ方」でもお伝えしたように、組織でシナリオプランニングを活用する場合、未来を描くことだけで終わりとせずに、描いた未来を企業の中で活用する目的を明確にすることが重要です。

 それを踏まえると、シナリオ分析のステップは、描いたシナリオをプロジェクトの目的を踏まえて詳細化するステップだといえます。シナリオ分析のステップでは、詳細化のために問いを立てるということをお伝えしましたが、立てるべき問いは何でもいいわけではなく、プロジェクト自体の問いとのつながりを意識することが大切です。

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