CIOの役割は「会社の戦闘能力を上げること」 でも、どうやって? 変化の渦中でRIZAP CIOの岡田氏が描く戦略は:CIOへの道(3/3 ページ)
これから自社の戦略を大幅に変更し、成長路線を目指すRIZAPグループ。ファーストリテイリング出身で、現在、RIZAPグループでITと経営をつなぐ役割を果たすCIO、岡田章二氏に、変化の時代に会社の戦闘能力を上げるための方法や業務現場との付き合い方、CIOとしての持論を聞く。
中野氏: そう。ITは技術そのものもトレンドも目まぐるしく変化する。長期投資は“システムより人に注力するのがより本質である”という岡田さんの考えには私も同意しますね。変化を継続的に起こせる組織や人を作っていくことの方が、より本質的な課題だと思います。
岡田氏: よく「CIOをどう育成すればいいのか」みたいな話題が出ますが、これも個人的には違和感を覚えています。CIOというのは選ばれる立場のポジションですから、選ばれるよう自ら切磋琢磨するものです。
僕自身もこれまで、システムの仕事を30年以上も命懸けでやってきて、その結果、CIOとして選ばれるようになったわけですが、一方でシステムに全く触れたことがない方が、経営管理や総務との兼任でCIOを名乗り、「攻めのIT」などと言っているのを見ると、少し違和感を覚えます。
中野氏: 「私はITのことはよく分かりませんけど、よろしくお願いします」と言われても……。よろしくも何もないでしょう、あなたの仕事ですよと(笑)。
岡田氏: まったくです。ドラッカーの書物に「何によって覚えられたいか」という言葉があるのですが、私も会社名や役職名ではなく、やっぱり「何をやったのか」で覚えられたいと思ってるんです。仕事って、何か新しいことをやるときには、逆風やハレーションがつきものですが、それらを乗り越えて「こんなことをやった」「こんな失敗をした」「こんな成功を収めた」「こんな責任を取った」ということをたくさん積み重ねていくのが、真の意味でのキャリアなんだと思います。そう考えると、役職なんてどうでもいいんですよ。
そのときに、「人と違うこと」がすごく重要だと思うわけです。
CIOといったところで、(覚悟もなく就任してしまったCIOも、覚悟を持って命懸けで職務を全うしようとするCIOも)皆、一緒くたにされてしまうのですよ。だから私は、早く自分の専門としている業界内においては、社名より名前が先に出てくるようになりたいと思っています。「RIZAPの岡田」ではなく、「岡田がいるRIZAP」というふうになりたいんですよね。「岡田がいるユニクロ」だったように。自分の仕事をすればいいと思うんですよ。それがたまたまCIOという役職だっただけの話であって。
中野氏: まず、「自分であることが大切」ということですね。それをベースに置かなくてはだめだと。確かにCIOレベルの話だと、他人のまねをしたところで、その人よりうまくできるはずもありません。まねをするくらいならいっそ、その人の下で働いた方がいいですよね。
システム企画のような企画職やマネジメント職は、「その人が何者であるか」が仕事に表れる傾向が大きいと思うのです。より大きなチームなり施策なりを方向付けていくには、その根拠となる「その人がどういう世界観を持っているか」が重要になる。よく情シス部長とCIOとの違いはなんだろうなと思うのですよ。技術力やマネジメントスキルがあるというだけでは“部長や課長止まり”な感があり、じゃあ、CIOって何だろうと。もちろん、四天王で最弱じゃない方のCIOですね(笑)
じゃあ、経営の観点を持てばCIOと呼べるのか? でも、それはたぶん、経験とテクニックの話であり、その立場になって場数を踏めばできるのだろうと。それだけでは何かが足りない気がしています。岡田さんをはじめとする“本気で改革を進めるCIO”の方々とお話しする中で、CIOには必要なのは「より大きな全体像、世界観みたいなもの」なのではと思い至りました。「Six-bubbles」や「3つのP」のようなフレームワークも世界観の一部であり、それを“誰がどんな経験を経て語るか”によって違いが出てくる。フレームワークは実践の中で使い込んできた人が語れば、説得力も実効性も増します。そこまでいけばCIOは、企業にとって非常に重要な役割になると思います。それをCIOと呼ぶかはもう、どうでもいい話ですね。
CIOの持論
IT投資を利益に結び付ける会社は少ない。
IT投資の前に、業務プロセスや組織を作らなければ、何も変わらない。
それをIT部門に丸投げする経営などあり得なく、システムを作ることは、経営の最も重要な役割である。
CIOの使命は、経営の一員として現場とIT組織の中心に入り、会社の「経営課題の解決」や「次なる戦略」を日常業務とつなげていくことにある。
岡田章二
【前編を読む】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 経営の数字を変えないIT投資は意味がない ライザップIT部門のトップが語る「これからの情シスの役割」
「システム投資をする上で私自身がとても重要視しているのが、経営の数字をいかに変えていくか”。これを徹底してやってきた」――。これがライザップのIT部門を率いる岡田章二氏のポリシーだ。同氏は難しいといわれる“経営と一体化したIT投資”をどうやって実現しているのか。 - プロ経営者 松本晃会長の下、現場では何が起きていたのか――カルビー大変革の舞台裏
日本を代表するプロ経営者として知られるカルビーの元会長、松本晃氏。同氏がカルビーの経営に大なたを振るったとき、人事やIT部門はどんな施策でそれに対応しようとしていたのか。現場の取り組みに迫った。 - 1年半でシステム刷新のクックパッド、怒濤の「5並列プロジェクト」に見る“世界で勝つためのシステム設計”
海外展開を視野に入れ、“世界で勝つためのシステム構築“に取り組むことになったクックパッド。海外企業を参考にプロジェクトを進める中、日本企業のシステムとそれを支える組織との間に大きな差があることを認識した同社は、どう動いたのか。また、分散と分断が進み、Excel職人が手作業で情報を連携している状態から、どのようにして統合された一貫性のあるシステムに移行したのか――。怒濤のプロジェクトの全容が対談で明らかに。 - “シャドーITを生まない”コーセーの「頼られ情シス」はどうやって実現したのか
「IT部門にとって一番重要なのは、無駄なシステムを作らないこと」――。はびこるシャドーITを巻き取り、一貫性のあるシステムを構築するまでにはどんな苦労があったのか。化粧品大手コーセーの情報統括部長 、小椋敦子さんに聞いた。 - 現場スタッフが“Excel脳”から“データベース脳”に バリューコマースは、Excel職人が活躍する世界をどう脱したのか
会社のあちこちでExcel職人が活躍し、情報の分散と分断が起こってしまう世界からバリューコマースはどうやって抜け出したのか。