「買う」はどう進化するか? 「買い方の未来」から事業価値を刷新する:視点(3/4 ページ)
「買い方の未来」をふまえて、新しい事業価値刷新を検討するエクササイズをしてみたい。B2CやB2Bビジネスにおいて、新たな事業価値の発見ができればと考えている。
3、消費者の根源的ニーズの満たし方が変化している……「買い方」の過去と未来の比較
そしていま、これらの根源的ニーズの「満たし方」が、過去と未来とで大きく変わろうとしている。「過去の満たし方」と「未来の満たし方」を簡単に比べてみると、下記のようになる。(図2参照)テクノロジーの進化がそれに強く寄与しているが、それだけではなく既存機能の組み合わせでそれを達成している例も多い。いずれにしても、消費者の根源的ニーズの満たし方が進化しているということだ。先ほどの4つに加えて、さらに例を挙げていこう。
★1、レコメンデーションエンジン:Stylumia(インド)
インドのアパレルメーカー向けソフトウェアメーカーは、AIによって、Web上の画像、ユーザー行動、SNSのテキスト、ECサイト上の顧客行動 を分析し、例えばパリやNYでリアルタイムで流行している商品からビジュアルで顧客志向のデザイン提案をしてくれる。ZARAではこれを人海戦術で実行している。仕掛けは、店長がデザイナーに頻繁にフィードバックする仕組みだ。Stylumiaは人海戦術に頼らず売れる商品情報を小売店舗へも展開し、在庫圧縮と定価売り切りが可能な世界を目指している。
★2、大量に試して選択:ModiFace(カナダ)
従来は口紅1本を購入する場合も、自分に似合うかどうか試すためには百貨店へ足を運び、混雑した美容カウンターで待ったうえに美容部員に好みを伝え、実際に塗ってみては落とし……と労力がかかっていた。これを解決したのがメークシミュレーションアプリを提供するModiFaceだ。スマートフォンで自分の顔に手軽にメーク商品を合成して、大量かつ高速に試すことができるAR技術を化粧品メーカーや小売企業に提供する企業である。オンラインで即購入可能の機能を付与し、販売チャネルとしているメーカーもある。こういったメークシミュレーションアプリはエンターテインメント性を備え、かつ新商品情報入手のメディアとしてもすでに消費者に支持されている。
★3、バーチャルでチェック:Maxent(米)
いままでは、大型家具(ソファなど)を探す際、配置場所を採寸した上で複数の店舗で現物を見て多少の不安感を残しながら購入していた。しかし、搬入後に初めて部屋の雰囲気に合わないなどに気付き後悔することがある。Maxent社はメーカーと組み、そんな失敗をなくすため、モバイルアプリで生活空間を撮影するとVR/ARで商品を好きに配置し確認できる。「失敗をしない」選択肢を提供してくれる。
★4、非稼働・不要物を価値化:ラクサス(日本)
過去に購入したが家庭内で眠っている商品は意外と多い。シェアリングサービスやC2Cの売買サイトが支持されるようになり、不用品や非稼働の所持品が市場に流れる動きが進んでいる。ラクサスはクローゼットに眠るブランドバッグを貸したい人とブランドバッグを「必要な時だけ使いたい」や「いろいろなデザイン・カラーを楽しみたい」消費者をつなぐ。貸した人はレンタル中には毎月の手数料が入る仕組みだ。傷・汚れ・紛失時の保障も無料でついてくる事もあり18年現在、1万6千個のバッグが預けられている。
★5、オートフルフィル:GenyCan(米)
消耗品の使用後に再発注を自動化するIoT家電・家具は、将来的に必須アイテムとなるだろう。GenyCanは「ごみ箱」であるが、捨てられた日用品などのパッケージのバーコードを読み取り、買い物リストを送信してくれ、発注まで自動設定も可能である。例えば洗剤の詰め替え液体を補充した後にパックを捨てると自動注文してくれる。
★6、瞬時の新与信システム:Ant Financial(中国)
Alibabaグループのアント・フィナンシャルが提供する「芝麻信用」サービスは、決済履歴だけでなく多用なデータを活用して個人の信用スコアを算出。ロサンゼルスなどの世界5つの国際空港ではレンタカーを借りる際、信用スコアで認証すればデポジット、クレジットカードの提示が不要で車の返却時後に決済するだけですむ。今後、C2Cサービスにおいても、購入者が販売者の信用を即時に判断できるようになる可能性を秘めている。
★7、経過観測ツール:ソニー損保(日本)
運転時の急加速・急ブレーキの回数とその加減をジャイロセンサーを搭載した機器で計測・点数化する。点数レンジに応じて保険料を最大で20%キャッシュバックする特約をソニー損保が開発。ドライバーは好成績を残すべく、「思い込み(“だろう”)運転」ではなく「予測(“かもしれない”)運転」や余裕を持って出発するなどの安全運転をゲーム感覚で楽しみながら行なうようになる。
★8、投げ銭:一直播(中国)
個人がライブストリーミング動画を配信するプラットフォームである一直播(イーチーボ)では、面白いコンテンツ配信者に視聴者がプレゼント(換金可能)を贈ることで、応援したりチャット機能でつながりを楽しめる。中国では投げ銭で月収1200万円を稼ぐ配信者も存在する。また、このモデルは販売にも活用できるためライブ配信で商品の感想を聞き購入するライブコマースも増えている。中国では偽物・悪質商品があふれ、企業CMですら安心できないといわれる。ライブ動画は加工ができないことに加え、投げ銭をたくさん集めるなどの信用指標のある配信者が、購買の安心感と楽しさを提供している。“おしゃれでかわいい”を動画発信するC Channel(日本)でも同様の取り組みをしている。
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