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ネックレスを引っ張るとどこが切れるでしょうか? 私がリクルート在籍時代に11年間社内講師をしていた「メディアの学校」の冒頭でいつも聞いていた質問です。よくある回答は「つなぐ金具の部分」というものでした。一瞬、なるほど、そうかもしれないと思います。しかし、正解は違います。
正解は「一番弱い箇所」です。場所はどこか分かりません。「金具の部分」かもしれません。他のつなぎ目かもしません。一番弱いところが切れるのです。では切れないようにするにはどうしたらいいでしょうか?
「一番弱い箇所」を強化すればいいのです。しかし、そこを強化すると、次に弱いところが切れます。そこも強化すると、更に次に弱いところが切れます。順に弱いところを強化していき、全ての箇所が引っ張る力よりも強くなると、ネックレスは、引っ張っても切れなくなります。この「弱い箇所」の事を「制約条件」といいます。
仕事も同じです。
例えば、提案営業職には、3つのスキル、「プレゼンテーション力」「クロージング力」「ヒアリング力」が必要です。それぞれ10点満点中5点レベルのスキルが必要だとします。ある営業メンバーのスキルレベルが、プレゼンテーション力5点、クロージング力8点、ヒアリング力3点だとします。すると営業成績は、最も点数の低いヒアリング力3点の影響を強く受け、結果3点レベルの売上結果になるということです。
プレゼンテーション力は5点なので問題ありません。クロージング力は8点なのでかなりのレベルです。しかし、ヒアリング力3点に足を引っ張られて、3点レベルの売上結果しか出せないのです。求められる成果を挙げるには、ヒアリング力を5点まで上げる必要があるということです。
これは「ザ・ゴール」で有名な、エリヤフ・ゴールドラット教授が提唱している「制約条件理論」の私なりの解釈です。制約条件理論では、最も弱いところ(制約条件)を守ると、強くなるといっています。その1番弱いところが、今回の提案営業職の例では、ヒアリング力3点にあたるのです。
実は組織も同じです。組織の成果も一番弱いところが「制約条件」になるのです。分かりやすいのは、工場の組み立てラインです。A、B、Cの3つの機械で順に加工をして製品を作ります。最初の工程にある機械Aは1時間に50個加工ができます。次の工程の機械Bは30個加工ができます。最後の工程の機械Cは25個加工ができます。この組み立てラインでは、1時間に何個製品を作ることができるでしょうか?
回答は、機械Cが加工できる25個になります。いかに機械Aや機械Bが加工できても最終的には機械Cの生産能力に影響を受けるのです。
では、組み立ててラインの生産能力を上げるにはどうすればいいのでしょうか。ネックレスの例えと同じです。機械Cを強化すればいいのです。例えば機械Cの前に使っていた古い機械C(旧タイプ)を倉庫から持ってきて、手前の工程、機械Bの加工後に、機械Cと機械C(旧タイプ)に振り分ければいいのです。
その際の機械C(旧タイプ)の作業員はどこから補充すればいいのでしょうか?もともと機械Cを担当していた作業員にやってもらってはいけません。そんなことをすると機械C(旧タイプ)による加工は増えるかもしれませんが、機械Cの加工量が減るからです。回答は、「機械Aの作業員から異動してもらう」です。
これが正解なのですが、往々にして機械Aと機械Bの作業員やリーダは、機械Cの問題なので、機械Cの作業員が頑張ればいいという部分最適な発言や判断をしてしまいます。これは工場の組み立てラインの話だけではありません。全ての組織で当てはまる事です。例えば、組織の中で「制約条件」はどこでしょう。一番弱い人たちは、誰でしょう。
答えは、「新しく組織に入った人」と「雇用形態が弱い人」です。具体的には、新卒、中途採用者、異動者です。あるいは派遣、アルバイト、契約社員です。彼らは、その組織や仕事に関しての経験や情報が少ないのです。彼らが早期に立ち上るために、どのような支援をしているでしょうか?
先ほどの機械C(旧タイプ)の作業員割り振りのように、自分で情報を取るべきだと考えている旧人(正社員かつその組織に長くいる人)が多いのではないでしょうか。このような組織は、制約条件理論を無視しているのですから、高い成果を出すことはできません。
みなさんの組織はいかがでしょうか?
冒頭に私が11年間リクルートで社内講師をしていたということを書きました。2つ講座を持っていました。1つは「KPI」、もう1つが「数字の読み方、活用の仕方」でした。数字については、極端に苦手意識をもっている方がいるのです。その方々向けに「四則演算だけでいろいろなことができる」ことをテーマに講座をしていたのです。
仕事の大半に数字がからんできます。「数字」が苦手だと、それが「制約条件」になって仕事の成果の足を引っ張ってしまうのです。
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