イノベーションの実現に欠かせないこと:既知とアイデアの組み合わせで市場を変えろ(1/2 ページ)
ポイントは2つ。LMI推進の強力なチーム作りと、リスクを抑えた挑戦の積み重ね。
こんにちは、永井俊輔です。看板(サイン&ディスプレイ)事業など手掛けるクレストHDの代表取締役です。クレストHDは、看板業界などのように伝統と歴史を持つ業界がイノベーションを起こし、既存の市場(レガシーマーケット)を成長市場に変えていく取り組みを支援しています。
この取り組みを、われわれはレガシーマーケット・イノベーション(LMI)と呼んでいます。
全5回の連載も、いよいよ今回が最後です。前回は、テクノロジーやビジネスモデルとの組み合わせによってLMIのアイデアを考えました。
今回は、そのアイデアを目に見えるカタチにする方法を考えます。アイデアをカタチにするためのポイントは「LMIのチーム作り」と「リスク管理」です。
まずはチーム作りについて考えてみましょう。チームを主導するのはLMIのリーダーです。社長がリーダーとなって旗を振っても良いですし、社員の誰かがリーダーとなっても良いのですが、リーダーとなる人には条件があります。
チームリーダーの条件
1:LMIの重要性や意義を理解している
もはや説明不要ですね。どこを目指し、何をするか分かっているリーダーでなければチームは引っ張れません。
2:業界が好き、会社が好き
これも説明不要かもしれませんが、LMIに取り組む目的は、業界を成長させ、企業を育てることです。業界や会社が好きなことが大事ですし、批判的な人や後ろ向きな人ではリーダーは務まりません。
3:テクノロジーについて多少の知識がある
LMIは既存の商品やサービスにテクノロジーを組み合わせます。テクノロジーの分野にまったく知識がない人はゼロから勉強しなければならず、時間と手間がかかりますので、ある程度の知識を持つ人がリーダーになったほうが効率が良くなります。
4:目標にコミットしている
LMIに取り組む過程では、壁にぶつかったり、うまくいかずに諦めたくなったりする時もあります。そのような障壁を乗り越えられるのは「絶対にイノベーションを起こす」「市場を変える」といった強い意欲と気概を持つ人です。
5:想像力が豊か
LMIは新しい何かを生み出す挑戦です。インターネットも、携帯電話も、自動運転も、あらゆるイノベーションが「こんなことが実現できたらすごい」という想像からスタートしました。固定観念を壊すためには、既存の常識にとらわれず、夢を語れることが大事です。周りが「無理だ」とあきれるくらい大きな夢を描ける人の方が良いと言えます。
6:LMIの取り組みを楽しめる
努力は続きません。しかし、楽しいことは、努力しているという意識なく続けることができます。「LMIが楽しい」「何時間も没頭できる」という人をリーダーにしましょう。
熱意ある同士をチームに引き込んでいこう
リーダーが決まったら、次はチームを構成するスタッフです。
LMIは会社全体で取り組んでいく一大プロジェクトですので、最終的には全員を巻き込みます。しかし、最初はLMIに理解がある人を厳選し、一歩目を踏み出しましょう。LMIの取り組みに懐疑的な人が入ることにより、チームの士気が下がる可能性があるからです。
LMIの活動が社内で認知されてきたら、徐々にメンバーを増やしていきます。リーダーや初期のメンバーが楽しそうに取り組んでいると「自分も混ぜてほしい」と思う人も現れます。そういう人もチームに加え、LMIを大きなムーブメントにしていきましょう。
人が増えればLMIに取り組むエネルギーも大きくなります。アイデアも多様になりますし、役割分担しながら進めていくこともできます。
後述する試作品のレベルに合わせながら人を増やしていくのも良い方法です。試作品やお試し版ができたら、ブラッシュアップのために社内で高度な知識や専門的な技術を持つ人にアドバイスをもらいます。その際に、彼らにもチームに参加してもらいます。
また、将来的に商品化するためには、売り方や広告などについても考えていく必要があります。その観点から、営業やマーケティング部門の中からも、LMIの理解度が高い人や、業界や会社を変えたいという熱意がある人を優先しながら、チームに加わってもらいましょう。
最終的には全員を巻き込む必要がありますので、チームを育てながら、社内教育としてLMIについて学ぶ研修などを行っても良いと思います。
クレストHDにおいても、インターン研修の内容はLMIについて学ぶことを中心にしています。研修はグループワークで行い、成熟産業を花形事業に復活させるためのアイデアを出し、議論します。そのような機会を通じて、半ば強制的にアイデアを出す場を作ったり、「自分たちの手で変えられる」「変えていこう」という雰囲気を作ったりすることも、LMIを全社の取り組みにしていくための有効な方法です。
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