僕たちはどんな幸福も「慣れっこ」になってしまう:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)
望ましい状態を手に入れてもそれに慣れっこになってしまい、満足度が以前の状態に逆戻りしてしまう。どうすれば幸福になれるのだろうか?
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。
僕らは生きている中で「お金」「地位」「美しいパートナー」などさまざまなものを求めています。ただ、本当に求めているものを突き詰めると、それらは全て「幸福」を手に入れるための手段であると換言できるはずです。
ただ、ここで残念なお知らせがあります。僕らはどれだけ幸せな状態を手に入れても、時間とともにその幸せな状態を「当たり前」だと感じ、さらに幸せな状態を求めてしまうようにプログラミングされているということです。
僕は25歳のフリーターのときに1億2700万円もの借金を背負い、10年かけてそれを返済したあと、年収が1000万円、1億円、10億円と増えていきました(このあたりの経緯については拙著『借金の底なし沼で知ったお金の味 25歳フリーター、借金1億2千万円、利息24%からの生還記』(大和書房)にくわしく書きました)。
ところが、年収が10億円になったからと言って、それに比例して自分の幸福度もうなぎのぼりになっていったかというと、決してそうではなかったのです。少なくとも、お金で手に入れた幸福は、僕の場合は長続きしませんでした。
そこで僕は「幸福」について独自に資料を集めて研究し、そのなかで出会った『目からウロコの幸福学』(ダニエル・ネトル/オープンナレッジ)という本に感銘を受けました。この本は2007年に刊行されたものですが、現在では市場で出回っておらず、高値で取引されていました。
本書をより多くの人に読んでもらいたいという思いを持って、このたび『幸福の意外な正体』と改題し、自ら監訳を買って出て新たに刊行した次第です。この記事の内容は、本書の内容に従って書かれています。
さて、本書の第3章では「ヘドニック・トレッドミル(幸福の回し車)」という言葉が出てきます。これは心理学者のフィリップ・ブリックマンとドナルド・T・キャンベルが1971年に学術誌で発表した論文の中で出てきます。
僕らは望ましい状態を手に入れてもそれに慣れっこになってしまい、満足度が以前の状態に逆戻りしてしまう。それはさながら、ネズミが回し車をカラカラと回しながらも、結局どこにもたどり着けないのと同じであると表現したのです。
このことをアメリカ人の生活調査で裏付けたのが、ロサンゼルスの経済学者リチャード・イースタンです。
調査に参加した人たちは、さまざまな消費財(家、車、テレビ、海外旅行、プール、別荘など)のリストを見せられ、「自分が理想とする生活にぜひとも必要なアイテム」をチェックします。そして同じリストの中で、「自分がすでに所有しているアイテム」もチェックします。そして、16年たったのち、同じ調査を繰り返したのです。
年齢を重ねるに連れ、多くの人は以前よりも所有しているアイテムの数が多くなります。ところが奇妙なことに、どれだけいろいろなものを手に入れても、「自分が理想とする生活にぜひとも必要なアイテム」と「自分がすでに所有しているアイテム」の差は縮まらなかったのです。平均的には「つねに2つばかり足りない」という状況でした。
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