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第2回: 新人の自発性は「10秒会話」で伸ばす新人が勝手に育つ「10秒会話と質問」(1/2 ページ)

日々の新人との会話の中で、ちょっとした質問を投げかけて主体的に考えさせるには?

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『10秒で新人を伸ばす質問術』

 「忙しくて教える時間がない」「でも、早く自分で考えて行動できる部下に成長してほしい」」というこの新人指導者の悩み、どう解決したらよいのでしょうか?

 それは「10秒会話」というアプローチが有効です。具体的には、10秒の質問のやりとりを通じて新人に主体的に考えさせるというものです。第2回目は、日々の新人との会話の中で、ちょっとした質問を投げかけ、考えさせるアプローチについてお伝えします。

立ち話の10秒で新人を成長させる

 「立ち話の10秒で新人を成長させる」と聞いて、「そんなこと本当にできるのか?」と思ったら、それは正しい感じ方だと思います。しかし、コーチングの手法、そのなかでも「質問スキル」を活用すれば、それは可能です。

 私はソフトバンクに在籍していた当時、職場は苛烈ともいえるスピードの中で皆仕事をしていました。私も膨大な人数の新人育成の仕事以外にも、さまざまな仕事のオーダーが日々入ってくる状況でした。だからと言って「お手上げです」と泣き言を言うわけにもいきません。必然的に、なんとかやりくりして捻出した短い時間、細切れ時間に新人育成の勝負をかけざるを得ません。目の前にある10秒を大切に活用するしか、育成の道がないわけです。どうすればその短い時間で、効果的な指導ができるか。

 試行錯誤の果てにたどり着いたのが、「時短質問を活用して、10秒で新人を伸ばす」というアプローチです。

 このやり方は、私の指導時間と手間を大幅に軽減させました。と同時に、一方的に教える従来型の指導よりも、10秒アプローチのほうが、より新人自らが主体的に考えるようになり、結果的に一人前になるまでのスピードを加速させることができました。まさに、忙しい職場が求めていた方法でした。

 では具体的に、そのやり方を説明しましょう。

 例えば入社して半年ほど経過した新人と一緒に、これから得意先に同行営業に向かうとします。商談時間前にお客さまのオフィスに着き、ロビーのソファで新人と私が座って、担当者が姿を現すのを待っています。

 まさにこの瞬間、私なら、新人に考えさせたいことを凝縮した、こんな「時短質問」を投げかけます。

 「今日の商談のゴールは、どこに置いているかな?」この質問にかかる所要時間は、およそ3秒です。ちょっと考えて新人が答えるのにも、それほど時間はかかりません。せいぜい数十秒、早ければ5秒かそこらです。とすると「10秒で育成」は、決して大げさな話ではないのです。

<質問による育成: 10秒トレーニング>

  • 時短質問を投げかける(指導者側: 所要時間3秒)
  • 質問に対して考えて答える(新人側: 所要時間7秒)

 もちろん、お互い慣れないと最初は難しいと感じるかもしれませんが、徐々に慣れると誰でも10秒程度で完結できるようになります。もし答えられなければ、「今日のゴールは○○にしておくといいと思うよ」と伝えます。

 そして、また同じような同行営業のシチュエーションのときに、「今日の商談のゴールはどこに置いているの?」と聞くわけです。今度は答えられる可能性が高まります。こうした10秒で伸ばす時短質問を繰り返すことで、新人は自らの力で考えるようになっていきます。そして自分の力で考えることで成長が早まるのです。

 同行営業の例に戻りましょう。商談は無事終わり、私は新人と別の場所に向かう予定です。この、駅に向かうまでの短い時間も、育成の好機にできます。

 先ほど終わったばかりの商談について、新人に問いかけます。「商談中、お客さまが一瞬ネガティブな反応をしたけれど、あれはどんな意味だったか分かるかな?」

 新人は「価格の部分で苦い表情をされたのか、それとも企画の中身自体の問題なのか、そもそも“新人のお前に口を出されたくない”という意味だったのか、どういう意味だったのだろう?」と、自分なりに一生懸命にあらゆる角度から考えてくれるでしょう。こうした機会を与えることは、十分に育成になっているのです。

 このように、「時短質問」を活用した「自分で考える」という10秒の訓練を、少しでも日常業務の会話の中に取り入れましょう。じっくり座って考えさせるのも必要ですが、効率を追求する日々の仕事のなかでは、形式張らずに日常の会話の延長線上で「自分で考える」訓練をするのも有効です。

匠の時短質問

(商談直前のシーンで)

「今日の商談のゴールは、どこに置いているの?」

(商談が終わったあとのシーンで)

「次回の商談に向けて今日やるべきことは?」


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