迷走するCHQ
ローランド・ベルガーの調査(N=326社(11か国、30業種))によると、コーポレート本社(Corporate Headquarter, CHQ)の機能に満足している企業はわずか23%。「CHQの重要性は薄れ、近い将来機械に取って代わられる」との見方は56%に達した。あるときは事業部門のけん引者、あるときは事業部門の支援者たるべきCHQが、事業部門から「ダメ出し」を突き付けられている。
実際、CHQの戦略立案機能は各地域・各事業部門への分散化が止まらない。他方、経理・人事といった業務支援機能は徹底集約(Shared Service Center, SSC)、あるいは外部化(Business Process Outsourcing, BPO)が加速。CHQは、機能分散と機能集約の双方向ベクトルのみならず、外部化の脅威にさらされている。(図A1参照)
活路はDXとイノベーション
一般に、CHQの機能に影響を与えるメガトレンドは6つある。
グローバル化、人材獲得競争、地政学リスク、イノベーション、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、サステナビリティ。中でも事業部門が注視するメガトレンドは、DXとイノベーションだ。グローバル化や人材獲得競争が企業競争力を左右することは間違いないが、これらは今や事業部門の前線課題。CHQの機能に影響を与える事象ではなくなりつつある。(図A2参照)
では、DXやイノベーションとCHQを結び付ける要素は何か。調査から見えてきたのは、自動化、コネクティビティ、データの3要素。それぞれ、ロボティクスやAI、企業間・事業部門間コラボレーション基盤、センシングやアナリティクス技術だ。CHQに対する満足度とこの3要素への貢献度には極めて高い相関関係が見られる。貴社のCHQはこの3要素に正面から向き合っているだろうか。
事業モデル革新者としてのCHQ
そもそもCHQが担うべき役割は、本質的に2種類しかない。一つは事業モデル革新支援。言うまでもなく、CHQそれ自体は利益創出主体ではない。コストセンターだ。各事業部門に利益貢献してこそ存在意義がある。しかし多くの企業のCHQは、各事業部門の戦略に対するホッチキス部門か口先介入部門にとどまる。自動化、コネクティビティ、データの3要素をフル活用し、単なるDigitalizationを超えたTransformationを企図し、事業モデル(もうけ方)革新を支援しなければならない。
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