第4回:仕事のクオリティーを上げる「質問ノック」:新人が勝手に育つ「10秒会話と質問」(1/2 ページ)
さまざまな環境下で、新入社員が仕事のクオリティーを高められるような指導上のヒントとは?
外部環境の変化が激しい中で配属された新入社員は、リモート環境下において、例年以上に早期の成果創出が求められるようになるでしょう。「10秒会話」とは、3秒で質問し、7秒で考えさせる新人との最小単位での対話のことを表しますが、リモート環境下では、短い対話を複数重ねていく方が効果的でしょう。
今回は、複数の10秒会話に用いる質問フレーズをご紹介し、どんな環境下でも新入社員が仕事のクオリティーを高められるような指導上のヒントをつかんでもらえたらと思います。
相手の立場を考えるクセをつけさせる質問
新人に早期に身につけさせたいことの一つが、「相手の立場で考える」ことです。学生から社会人になったばかりの新人は、ものごとを自分中心に見がちで、相手の立場で考えるのはとても難しいものです。というより、目の前の仕事をこなすのに必死で、相手の立場で考えるという発想にそもそも至らないことも多いわけです。
しかし、ビジネスには相手がいます。相手の立場を考えられないと、いつまでたっても成長できません。私たち指導者の役割は、「それは他者から見たらどうなのか」という10秒で伸ばす時短質問を通じて第三者の視点で考えさせる訓練をし続けることです。
私が担当していた新人に、とある代理店向けの提案資料の作成を依頼した例で説明しましょう。
私:「早速作成してくれたんだね」
新人:「いかがでしょうか?」
私:「うーん……あなたがやりたいことばっかりだね……」
新人:「それではダメでしょうか?」
私:「お客さまが求めていることをもっと入れてほしい」
新人:「確かにそうですね」
その提案書には、新人として盛り込みたい視点しか入っていなくて、代理店担当者の立場に立った視点での情報があまり入っていませんでした。そこで相手の立場に立って考えさせるために、次のような質問を投げかけました。「もしあなたが担当者だったら、どんな観点があったら採用しやすいかな?」
担当者の立場に立って考えざるを得ない質問をして、10秒という短い時間で無理やり相手の立場で考えさせるようにしたのです。私たち指導者は、新人が日頃接している人、つまり、新人を取り巻く関係者の視点に立って、質問することが求められています
匠の時短質問
(新人を取り巻く関係者の立場で考えさせたいとき)
「“お客さまの立場”で考えると、どうなる?」
「“○○部門の立場”で考えると、どうなる?」
当事者意識を持たせる質問
新人が安易に依存してくる原因はどこにあるでしょうか? その原因の一つに「私はまだ新人だから誰かに助けてもらえるかも」とか「まだ僕は新人だから、自分が責任をとるわけではないよね」とかいうような新人としての甘い考えがあります。
新人が困難と向き合わず、楽に逃げようとしているときは、当事者意識を持たせる質問をします。依存的な対応をしてきた新人に対して、「一人でやるとしたら?」「仮にできるとしたら?」などの質問を投げかけ、当事者意識を持たせるようにするのです。
例えば、次のようなやりとりが考えられます。
- 例1
新人:「これ以上の新規開拓は私には難しいです」
指導者:「仮に誰かの力を借りて一緒にやっていくとしたら、どんなアプローチが考えられそう?」
- 例2
新人:「今回も先輩に同行をお願いしたいのですが、よろしいですか?」
指導者:「仮にお客さまが一人で対応してほしいと求めてきたら、どう商談を進めるかな?」
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