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迷った時、「答え」は歴史の中にあるビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

未来に起こることは、多くが歴史の中ですでに起こっており学ぶことは多い。大人らしい歴史の学び方を試してみてはいかがだろうか。

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 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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ニューノーマルは、歴史の中にある


『迷った時、「答え」は歴史の中にある。』

 「ニューノーマルは、どうなるんでしょう」と心配している人がいます。その答えは歴史の中にあります。未来に起こることは、多くが歴史の中ですでに起こっているのです。

 私たちは、それを忘れているだけです。一番分かりやすい例が、地震や津波、火山噴火です。大きな地震は100年に1回です。100年たつと、ちょうどそれを経験したじいちゃんやばあちゃんがいなくなっています。向こうもよく考えています。実際に考えているわけではありませんが、少なくとも人間の都合ではなく、地球の都合で起こっていることです。

 地球の歴史は人間に比べれば、はるかに長いです。人間の都合を地球に押しつける方がおかしいのです。津波対策も、未来予測をするよりは過去を見る方が理にかなっています。被災した町や村には必ず「ここまで逃げろ」という碑があるのです。

 普通は低いところに町があって、神社や寺は山の上にあります。ところが、伊豆では逆になっています。昔、ここに津波が来て、下に住んでいた人が高台に移転したからです多くのアクシデント、災害、トラブルは、歴史の中ですでに起こっています。そこに答えがあるのです。

 杉本博司さんは「新素材研究所」で新素材を探しています。新素材といっても、全て古い素材です。古い素材で忘れているものほど新素材になるのです。

 これが歴史の面白さです。歴史を見ていると、「意外に新しいんだな」と感じることがあります。岡本太郎さんも、火焔型の縄文式土器を見て、「これは新しい」と言いました。新しいものほど、すぐ古くなります。

 歴史の中にあるものほど新しくて、この新しさは古びないのです。例えば、ウルトラマンの造形は仏像がもとになっています。ウルトラマンの顔は、ちょっと笑っています。

 あれは教科書で習ったギリシャのアルカイックスマイルです。ウルトラマンは未来感がありますが、何のことはない、モデルはギリシャ彫刻や仏像なのです。

自分中心の歴史を、つくっていい。

 子どもの歴史の勉強と大人の歴史の勉強は違います。大人になると、いろんな仕事をし、いろんな趣味が生まれます。自分の好きなジャンルを通して、その歴史を1つの軸にして横に広げていけばいいのです。

 年表を自分の歴史順にやるということです。世の中に歴史嫌いが多いのは、1つはテストがあるからです。もう1つは、授業がチマチマゆっくりだからです。ゆっくりされると、流れが分からなくなります。カツ丼と同じです。カツ丼は、ある程度のテンポ感で食べないと味わえません。あれを「30回噛んで」と言われると、カツ丼の醍醐味(だいごみ)がなくなるのです。

 1時間の授業で過去から現代まで一気に3000年を学べば、流れが分かります。新入社員の仕事も、ベルトコンベヤーの一部分だけしていても全体は分かりません。最初から最後まで一回通して経験すると、全体が見えてきます。「今は全体の中のここをやっている。だから、こうした方が後の人の仕事がやりやすいな」というのが分かるのです。

 歴史で大切なのは、点ではなく、流れです。奈良時代とか平安時代とかの時代順に勉強するよりも、1つのテーマを通して縦に学んだ方が面白くなります。学校時代に輪切りでやっていたことを、予備校では前世史とかキリスト教史とかで縦に切っていきます。だから予備校の先生の歴史の授業は面白いし、分かりやすいのです。

 自分で歴史を勉強する時も同じようにします。しかも、自分中心で構いません。自分の趣味や出身地など、何を軸にしてもいいのです。

テストでなくなってから、歴史は面白くなる。

 大人の勉強で一番いいのは、テストから解放されることです。テストから解放されると、「何のために」がなくなります。「気になるから」「好きだから」「面白いから」と、目的なく勉強することが一番大切です。「歴史を勉強することによってお金持ちになろう」「偉くなろう」という目的を持たない方が歴史を勉強する強みになります。

 歴史上には、遺跡など意味不明なものがたくさんあります。遺跡に「これはどんな意味だろう」と考える人は、すでに現代の目的優先主義に毒されています。「目的がないものはあるから」と言われた時に、頭の中で混乱が起こります。「何のために」を言ってくれないと落ちつかないというのが、現代人の陥っている狭い落とし穴です。

 縄文式土器のウニャウニャした形は鍋としては使いにくいです。縄文式土器は実用です。「使いにくいのに、何であのウニャウニャがあるのか」と考えて、「理由はないけどいいんじゃない?」という理由がないことに現代人は耐えられないのです。

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