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リモートワークの広がりで問われる『本物の「上司力」』ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

多くの企業が急きょリモートワークを取り入れることになったが、十分な環境整備も心の準備もない中での導入に、マネジメントに悩む上司が急増している。

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 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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「部下の仕事ぶりが分からない」という悲鳴〜際立つ上司・部下の意識ギャップ〜


『本物の「上司力」』

 ここ数年、働き方改革の一環で在宅勤務をはじめとしたリモートワーク導入が勧奨されてきましたが、昨年まではIT企業や一部の先進的な企業の取り組みにとどまっていました。それが2020年に入り、想定外のコロナ禍によって、密閉空間、密集場所、密接場面の「3密」回避が喫緊の課題となり、多くの企業が急きょリモートワークを取り入れることになりました。しかし、十分な環境整備も心の準備もない中での導入に、マネジメントに悩む上司が急増しています。

 「テレワークと人事評価に関する調査」(2020年4月・あしたのチーム)によると、「テレワークをしてみて感じたこと」で管理職の答えの1位は「通勤時間がない分、読書や勉強などスキルアップの時間が持てる」(37.8%)、2位は「人とのコミュニケーションがなくさみしい」(30.6%)です。

 これに対し部下にあたる一般社員は、1位が「人間関係のストレスがなく気楽」(36.7%)、2位が「仕事態度に緊張感がなくなった」(28.0%)です。上司は寂しく部下は気楽という、対照的な結果が表れています(図1)。


上司と部下の意識ギャップ「テレワークをしてみて感じたこと」

 また、「テレワーク時に管理職が部下に関して不安に感じていること」では、1位が「生産性が下がっているのではないか」(48.0%)、同率2位が「報連相をすべき時にできないのではないか」「仕事をサボっているのではないか」(32.7%)とのこと。上司は部下の様子が見えず疑心暗鬼になり、テレワーク時の部下の人事評価は「オフィス出社時と比べて難しい」(73.7%)と答えています。

 また「テレワーク長期化に伴う組織課題に関する意識調査」(2020年4月・Unipos)では、「テレワーク前より部下の仕事ぶりが分かりづらい」と答えた管理職が56.1%であったのに対し、「上司や同僚の様子が分かりづらい」と答えた一般社員は48.4%で、上司側のほうが7.7%高くなっています。

 こうしてリモートワークが広がるなかで浮かびあがったのは、部下の日々の働きぶりを把握できずに悩む上司の姿です。職責意識の高い上司ほど、責務を果たせないと焦りや不安を感じているかもしれません。こうした背景には、会社組織としても社員の働きぶりを管理しきれない危機感があるといえます。

優秀な上司ほど陥りやすい「クイック・ウィン・パラドックス」

では、この真面目な上司が陥りがちなリスクを、どのように理解すればよいでしょうか。ハーバード・ビジネススクールのリーダーシップを教えるリンダ・ヒル教授が、新任管理職にありがちな問題行動を調査分析して明らかにした「5つの落とし穴」が、そのヒントになります(図2)。


成果を上げられない管理職が陥る5つの落とし穴

具体的には、次の5つです。

(1)隘路(あいろ)に入り込む――狭い路地に迷い込んだように周囲が見えなくなり、自分で全てを解決しようとする

(2)批判を否定的に受け止める――部下の異なる意見を自分への批判と受け止め、聞き入れられなくなる

(3)威圧的である――管理職の自分に権限があるからと、一方的に命令や叱責を行う

(4)拙速に結論を出す――部下の意見や状況を顧みず早く解決しようと、決めつけて判断する

(5)マイクロ・マネジメントに走る――部下を自分の操り人形のように微に入り細に入り指示し、動かそうとする

 こうなると、部下の心は余計に離れてしまい、やる気を失い、マネジメントは空回りし始めます。すなわち、早い成果を出そうとの焦りが、かえって成果を遠のかせるジレンマ――クイック・ウィン・パラドックスに陥ってしまうのです。

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