第2回 ドラッカー「上司の仕事は部下がやりやすくすること、部下の仕事は上司がやりやすくすること」:ドラッカーが教える「上司から評価される仕事術」(1/2 ページ)
マネジメントは、上司が部下を思うままに操る術ではない。マネジメントは上司と部下が力を合わせて取り組むものである。
上司にアドバイスを受ける
マネジメントは、上司が部下を思うままに操る術ではない。マネジメントは上司と部下が力を合わせて取り組むものである。上司は部下が成果をあげられるように部下に最大限の裁量権を与えることであり、部下は上司が成果をあげやすくするために上司に最大限尽くすことである。今回はその後者である「部下は上司が成果をあげやすくするために上司に最大限尽くすこと」についてお伝えする。
「上司は決してイエスマンを望んでいるわけではない。何にでも反対し、文句を付けてくるへそ曲がりも、もちろん困る。上司がほしいのは、理にかなった直言なのだ。賢い上司は部下を本能的に3種類に分類している。ゴマすり、アマノジャク、そしてバランス感覚のよい部下。できれば、この第3のカテゴリーに分類されたいものである」
こう言ったのは、ジョン・ハンコック社のCEO デービッド・ダレンサンドロだ。
彼の言うバランス感覚のよい部下とはどんな部下なのだろうか。そもそも、上司と部下はお互いどんな関係なのだろうか。
ドラッカーはこう言っている。
上役と部下は、お互いに貢献し合う関係である。すなわち、上役に自分が何をプラスすることができるか。逆に、上役から自分にプラスになるものとして何を奪えるかという関係である。このバランスが崩れれば、上役であること、あるいは、部下であることに意味がなくなる。ピーター・ドラッカー
上司と部下の関係はこうありたいものだ。前回伝えた通り、部下は上司との間に信頼関係を築かなければならない。上司とよい関係を築くことは、精神的なものでもなければ、単なる心掛けでもない。それは、仕事であり、責任である。
前回、上司をマネジメントするために行うべき次の5つのうち、第1に行うべきこととして「上司リストを作る」を紹介した。では、次は何をすればいいのだろうか。
ドラッカーはこう言っている。
第2に、上司が成果をあげるうえで、何がやりやすく、何がやりにくいかを上司本人に聞かなければならない。ピーター・ドラッカー
あなたの仕事のやり方で上司がやりにくさを感じているものがあるとすれば、それは何だろうか?もしかすると、上司はあなたの仕事ぶりに、頭を悩ませているかもしれない。上司はそれをしまい込んで、口に出さずにいるだけかもしれない。
上司は自分のやりやすいように仕事をする権利をもった、役職を超越した一個の人間である。そう聞いて、「そうだそうだ、その通りだ。自分がやりやすいように明日から部下を好きなように使ってやる」と考える人はいないだろう。これは、部下側の解釈であって、「自分のやりやすいように仕事をする権利をもった一個の人間だ」と部下に主張するものでもないし、この言葉を悪利用してはいけない。
話を戻そう。部下であるあなたは、上司にとって、しっくりくるように工夫する責任がある。部下であるあなたには、上司が成果をあげられるようにする責任がある。ためらわずに「上司、私がやっている仕事のやり方で、しっくりくるものと、しっくりこないものを教えてください。しっくりくるものはさらに増やし、しっくりこないものは改善します」と聞いてみてほしい。
上司にアドバイスを受けた後は、早速、仕事のやり方を見直して改善していこう。そして次の2点について、どのように工夫して仕事のやり方を変えるかを報告しよう。それだけでも、上司は安心してくれるはずだ。
1、しっくりくるやり方を増やす
2、しっくりこないやり方をなくす
ドラッカーも実際、これを実行した。ある銀行の頭取と月に1度、丸一日かけて懇談するコンサルティングを行っていた。コンサルティングの仕事を始めてから2年が過ぎた頃、ドラッカーはその銀行の頭取にこう尋ねた。「私がやっている仕事のやり方で、しっくりくるものと、しっくりこないものを教えてもらえますか」。もちろん、「今のやり方で満足している」と言ってもらえると思っていた。
ところが、頭取の答えはこうだった。「ドラッカー先生、実は……あなたのレポートは使いやすいとはいえません。先生からレポートをもらったあと、私は何時間もかけてレポートを社内用に書き直しているんです」。
意外な反応に驚いたドラッカーは言った。「なぜもっと早くそれを言ってくれなかったのですか?」。頭取は言った。「なぜもっと早くそれを聞いてくれなかったのですか?」。あなたとあなたの上司の間で、そんなやりとりがあるかもしれない。
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