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アイデアとソフトウェアが世界を変えるデジタルの時代こそIT部門が活躍すべきとき――IIBA日本支部代表理事 寺嶋一郎氏ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

コロナ禍でアフターデジタル時代を迎えようとしているいま、全社を俯瞰でき、ITという武器を持つIT部門こそが全社のDXを推進する先導役になるべきだ。そのためにやるべき7つのこととは。

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 アイティメディアが主催するライブ配信セミナー「ITmedia DX Summit vol.9 逆境を克服するDX 逆転突破の技術」Day1の基調講演には、IIBA日本支部代表理事、TERRANET 代表(元 積水化学 情報システム部長)の寺嶋一郎氏が登場。「日本企業のIT部門がコロナの回復期にすべきこと」をテーマに講演した。

さまざまな課題を抱える日本企業のIT部門


IIBA日本支部代表理事、TERRANET 代表 寺嶋一郎氏

 コロナ禍の約2年前、イノベーションで有名な中国の深センに行ってきました。深センは、一人カラオケボックスや宅配便BOXなど、いろいろな分野でイノベーションが生まれる「アフターデジタル」を体現している場所です。これまでデジタルとリアルは別々のものでしたが、デジタルの中にリアルがある世界がアフターデジタルです。コロナ禍においてはネットで常時つながり、ネットで買い物をしていますが、そんな世界観です。

 アフターデジタルの世界は、顧客接点のデータをたくさん持ち、それをエクスペリエンスのよさに還元していくというループをどれだけ速く回していくかという競争の世界です。バリュージャーニーともいわれ、OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)型のビジネスになっているのが深センです。コロナ禍により日本もアフターデジタルの世界に移行しつつあります。

 DXの取り組みは、アフターデジタルにおいては、さらに加速しなければなりません。待ったなしです。DXは、デジタルを前提とした企業に変身することで、ビジネスそのものだけでなく、人のマインドセット、組織、制度など、企業全体をトランスフォームすることが必要です。同時多発的に出現するさまざまな新技術を、当たり前に使っていく企業に変身することです。

 VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)の時代においては、変化に柔軟かつスピーディーに対応できる企業体質に変わることが必要です。「Software Is Eating The World(ソフトウェアが世界を飲み込む)」という言葉がありますが、ソフトウェアそのものが今後の競争力のカギになり、アイデアとソフトウェアが世界を変えていきます。そして、デジタルの時代こそ、IT部門が活躍すべきときなのです。

 しかし日本企業のIT部門は、さまざまな課題を抱えています。例えば、経営トップにIT部門への不信感があり、デジタル化の推進役として、DX部門を設置したり、CDO(最高デジタル責任者)を外部から採用したりという動きも増えています。また、事業部門が直接ITベンダーとデジタル化を進め、IT部門から見ればシャドーITが発生することも課題です。シャドーITは、ビジネスが拡大すると基幹システムとの連携が必要になり、最終的には作り直しが必要です。

 本当にデジタル化をIT部門以外で進めるべきなのでしょうか。私自身は違うと考えています。IT部門がきちんと取り組むべき、連携して取り組まなければならないと思っています。その意味では、IT部門がもっともっと力をつけていくことるが必要です。デジタル化を担うためにIT部門がやるべきことは、以下の7つです。

(1)ビジネス部門の信頼を得て、ITとビジネスを一体化せよ。

(2)モード2の文化を取り入れ、両利きの経営を行え。

(3)IT部門のカバーする領域を拡大し、全社を横ぐしを刺せ。

(4)変化に対応できる基幹システムやIT基盤の整備・再構築せよ。

(5)エンタープライズデータの提供者であれ。

(6)サイバー攻撃に備えよ。

(7)体制を整備し、人材を育成せよ。

コロナ回復期にIT部門がやるべき7つのこと

(1)ビジネス部門の信頼を得て、ITとビジネスを一体化せよ

 ITとビジネスを一体化し、ITの価値を最大化するためには、ビジネスアナリシスが重要になります。超上流、上流工程を独自のやり方で実施するのではなく、世界標準の知識やスキルを学び、ビジネスアナリストを育成することが必要です。問題なのは、要件を間違えれば、いくら高品質のソフトウェアを開発しても役立たず、やり直しの工数がかかり、納期が延びることです。だからこそIT部門は、ビジネスアナリシスを学び、ビジネスを分析、理解して、ITを開発、活用することが必要です。

(2)モード2の文化を取り入れ、両利きの経営を行え

 モード1、モード2という言葉があります。モード1は従来のIT部門のやり方、モード2はスピード、俊敏性を最重視した新しいIT部門のやり方です。モード1、モード2を使い分けるバイモーダルは、「知の探索」と「知の深化」で新規事業と既存事業を使い分ける両利きの経営の考え方に通じます。両利きの経営と同様に、モード1とモード2はお互いに足を引っ張るので、CIOの配下で2つの組織をマネージすることが重要です。

(3)IT部門のカバーする領域を拡大し、全社を横ぐしを刺せ

 モノのサービス化(Connected Industries)を考えたとき、R&Dからアフターサービスまでの一貫した対応ができなければデジタルビジネスは実現できません。製造業において、工場は生産管理部門の管轄なので、IT部門は関係ないと関与しなければスマートファクトリーは実現できません。IT部門は、ビジネスのバリューチェーンの全プロセスが、シームレスに連携できるように越境して、全社に横ぐしを刺す役割を担うことが必要です。

(4)変化に対応できる基幹システムやIT基盤の整備・再構築せよ

 SoRがスパゲティ状態で、企業がM&Aをしたときに、どのように基幹システムを新しい会社に対応していくのか、フレキシブルにメンテナンスできなければ、ビジネスのスピードにITがついていけず、足を引っ張ってしまうのは、まさに技術的負債です。この課題をいかに解消するか。技術的負債をそのままにしておけないので、どこかで決断をして、迅速に技術的負債を解消することが必要です。

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