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第2回 業務のデジタル化では「YouTuber」を目指せ(1/2 ページ)

数多くの日常業務を支える基本機能のうち、まず第1に「コミュニケーションのトランスフォーメーション」を果たさなければならない。数あるDXの取り組みの中でなぜ、コミュニケーションを最初に問うのか。

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どこからDXをはじめるか


『デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー』

 DXを段階的に進めるとして、どこから始めれば良いのか。顧客への新たな体験を提供する新規事業の創出。あるいは、データ基盤を構築し全社データマネジメントの共通化を進める。あるいは、デジタル人材を定義し教育メニューを刷新する。おそらくいずれも必ず直面することになる取り組みだ。しかし、これらをはじめとしたDXの王道とも言うべき施策に取り組むもっと前にやるべきことがある。日常業務におけるデジタル化だ。

 「業務のデジタル化」と聞くと拍子抜けするかもしれない。組織が生き残るかどうかという勝負に出るのに、初手がそれなのかと。もっと新規性と希少性の高いケイパビリティ作りへと踏み出すのではないかと思うかもしれない。

 もちろん、顧客に向けた新たな価値を提案していくには仮説検証やデザイン思考、実際にサービスを作り上げていくためにはアジャイル開発が不可欠である。多くの組織で、こうしたケイパビリティがこれまで育てられてきていない。効率化に焦点をあて続けてきた組織にはその手掛かりさえないことも珍しいことではない。いずれもこれからの組織の礎ともなる能力だが、それでもなおこれら以前に必要なことがある。数多くの日常業務を支える基本機能のうち、まず第1に「コミュニケーションのトランスフォーメーション」を果たさなければならない。

 数あるDXの取り組みの中でなぜ、コミュニケーションを最初に問うのか。DXの施策のほとんどが組織にとってこれまでの経験がないものばかりだ。もとより難易度の高い仕事となる。そうした取り掛かりもやり遂げるのも難しい仕事に挑むにあたって、そもそもお互いのコミュニケーションが「貧弱」であっては話にならない。難度の高い仕事が余計に難しくなる。DXに際して、まずもって組織自体が思うように動くことができなければ、何一つ結果を出すことができない。

業務のデジタル化ではまず「YouTuber」を目指せ!

 さすがに紙のやりとりは相当無くなってきているが、それでもいまだコミュニケーションの手段でチャットを導入していない、「メール」がメインであるというところも少なくない。特に、歴史の長い伝統的な業界ではいまだにメールが現役で主流であったりする。

 「顧客のどんな課題を解決するのか」もっというと「顧客とは誰のことなのか」といった根源的で、正解の無い探求にこれから取り組んでいくというときに、お互いの認識をそろえる手段がメールしかないというのはあまりにも無謀だ。

 組織のポリシーで決められているとはいえ、目指していることと手元で行っていることのギャップが大きすぎる。新たな体験を提供するアプリなりを開発するにあたって、組織の外部とのやりとりにも、内部のコミュニケーションでも、メールしか使えない。もちろんお互いに共通の認識としてもつべきタスクの管理にクラウドサービスなんて利用できない。やりとりするドキュメントは全てファイル形式。いまだにパスワードで暗号化された添付ファイルで運用しなければならない。こうした状況で作るものは「いままで顧客が体験したことがない、新たなサービス」なのだという。何年かけても辿たどり着ける気がしない。

 ゆえに、DXはまず足回りから。コミュニケーションの在り方からトランスフォーメーションしなければならない。どれほど理想的なゴールを描いたところで、足回りが重たく遅いままでは一向に進んでいかない。理想とするDXは間違いなく「びょうぶのトラ」にしかならない。

 では、具体的にコミュニケーションを変えていくにあたってはどのような指針を置くと良いのだろうか。利便性を高めるためのデジタルツールはすでに多種多様、数多く存在する。何をどのように変えるべきだろうか。唐突だが組織の中にいる皆さんには「YouTuber」となることを目指してもらいたい。

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