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伸びる入浴剤市場 コロナ禍契機に アース製薬は生産ライン増設

新型コロナウイルスの影響から家で過ごす「巣ごもり需要」がふくらんだのをきっかけに、入浴剤市場が活況を呈している。

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産経新聞

 新型コロナウイルスの影響から家で過ごす「巣ごもり需要」がふくらんだのをきっかけに、入浴剤市場が活況を呈している。血行促進やリラックス効果といった健康志向も加わり、利用が習慣化。コロナ後も成長が見込まれ、企業側は工夫を重ねる。アース製薬は兵庫県赤穂市にある入浴剤を生産する工場のラインを2倍に増設した。


アース製薬が増設した「温泡」の生産ライン=兵庫県赤穂市

 アース製薬の赤穂工場では、1箱で4種類の香りと湯色を楽しめる炭酸ガス入浴剤「温泡 ONPO」の製造が進む。

 「原料を調合した粉末を錠剤の形に固め、包装します」。アース製薬の赤穂工場で社員が生産ラインを前に説明する。長いアームのロボットが4種類を器用にすばやく取り分けていた。

 27億円を投資して生産ラインを増設したのは8月。それまでは1種類の錠剤を1分間に平均約200個製造していたが、倍の400個をつくれるようになった。製品を保管し、必要量に応じてロボットが搬出する自動倉庫も新設した。

 「温泡」は平成27年10月に発売。研究部門に調香師を置くほど香りにこだわり、ゆずや桃、ローズ、森などの多様な香りの製品を展開している。

 入浴剤市場は、新型コロナによる外出自粛で家にいる時間が増えたことから特需が発生した。「お風呂時間」が増えただけでなく、入浴剤で楽しみたいとのニーズもふくらみ、入浴剤の使用は習慣化、外出自粛が解除された後も市場の拡大傾向は止まらない。

 調査会社のインテージによると、入浴剤の市場規模は年々増加し、令和4年には平成29年の約32.9%増の691億円となった。とりわけ好調なのが、「温泡」のような発泡タイプで約1.5倍にまで伸長した。同社は「リラックス効果をうたったものや、子供と一緒に楽しめる玩具入りが伸びている。コロナ禍で温泉などに行けなかった分、家庭でのちょっとした楽しみやくつろぎのための需要が高まった」と指摘する。

SNS投稿に役立つ?

 発泡タイプの入浴剤市場で売上高トップを走るのが花王の「バブ」だ。同社は自社調査で、湯船入浴時間が「10分以上」と回答している人が全体で59%、20代では64%に上るとの結果に注目した。交流サイト(SNS)での自己表現に忙しい若者は「投稿のアイデアを生み出すために何もせずぼーっとする入浴時間を大切にしている」と分析。約10分間継続する炭酸の音や心地よい香りが特徴の新製品「バブ あふれるのはきっと、お湯だけじゃない」を今年9月に発売した。担当者は「入浴で感じる価値は疲労回復だけにとどまらず、風呂場で自分を磨く、もしくはあえて何もしないなど多岐にわたる」とする。

 「バブ」は昭和58年に世界初の炭酸ガス入浴剤として発売された。同社は首位を維持する秘訣(ひけつ)について「ライフスタイルの変化やニーズに合わせて商品ラインアップを拡張し、常に新しい入浴を提案してきたこと」と話している。

 入浴剤市場の活性化が企業の発想と投資を刺激することで、さらに新しいお風呂の楽しみ方が生まれるかもしれない。(牛島要平)

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