アサヒ飲料が開発した、樹木のように「二酸化炭素(CO2)を食べる自動販売機」が注目を集めている。仕組みは非常にシンプルで、カルシウム類からつくられた粉末状のCO2吸収材を入れた容器を商品取り出し口の裏側の空いたスペースに備え付けた。
一般的に、自販機を1年間動かすのに必要な電力の発電に伴うCO2の排出量は300〜350キロとされる。吸収材を商品補充時に月2回交換するだけでこのうちの2割を削減できるという。スギの木約20本分に相当する吸収量だ。
使用済みの吸収材は回収してコンクリートの原料と混ぜ合わせて使い、CO2を封じ込める。肥料に混ぜて利用し、土壌にCO2をため込み、植物の生育を促すこともできる。
6月から関東や関西に約30台設置して、場所によるCO2吸収量や吸収速度の違いなどを検証した。ある程度の検証データが得られたことに加え、建材用として使用済み吸収材に興味を示す建設会社が出てきたことから、来年1月以降、本格展開することを決めた。既存の自販機にも吸収材を搭載するなどして設置台数を増やしていく。
「食べる自販機」の吸収材は、CO2を空気中から直接回収する「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」と呼ぶ技術の一つだ。現在は自社の自販機を活用した取り組みにとどまるが、経済活動に制約を与えずに、温暖化ガスだけを減らせるこの技術の応用の可能性は大きい。
都会の中の“森林”を増やすため、「出口」となる使用済み吸収材の採用先を広げ、新たな適用の「入り口」も開拓する。同社未来創造本部CSV戦略部の菅沼剛チーフプロデューサーは「出口整備に力を入れ、多くの企業を巻き込んでいきたい」と話している。(佐藤克史)
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