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日立造船、カナデビアへ カタカナ・アルファベットへの社名変更が増加中

社名をカタカナやアルファベットに変える企業が増え続けている。実態とかけ離れた社名を変更し、新たな一歩を踏み出す。

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産経新聞

 社名をカタカナやアルファベットに変える企業が増え続けている。今年4月には「日本電産」が「ニデック」へ、10月には「凸版印刷」が「TOPPANホールディングス」へと社名を変更した。海外展開の強化や事業内容との整合性が主な理由だ。その最たる例が来年10月に「カナデビア」へと社名変更する「日立造船」。日立グループでもなければ造船業でもない。実態とかけ離れた社名を変更し、新たな一歩を踏み出す。

 「実際の事業と乖離(かいり)し、誤解を生む社名になっていた」。社名変更の理由について、日立造船の三野禎男(みのさだお)社長はそう話す。明治14年に造船業を営む「大阪鉄工所」として創業し、後に日立製作所の傘下に入り、昭和18年に社名を「日立造船」とした。以来、約80年にわたって同じ社名を使い続けてきたが、その間に企業としての実態は大きく変貌を遂げている。


インタビューに応じる日立造船の三野禎男社長=大阪市住之江区

 戦後の財閥解体で日立の資本系列から外れ、平成14年には不採算化していた造船事業を切り離した。今や日立造船はゴミ焼却施設建設の国内最大手で、「日立」も「造船」も関係がない。しかし、「日立造船という名前で積み重ねてきた実績や知名度があり、そこから離れづらかったのはあると思う」と三野社長が話すように、社名が持つ価値と実態との乖離という相反する要素の間で板挟みとなっていた。

 新社名の「カナデビア」は、日本語の「奏でる」とラテン語で「道」を意味する「Via」を組み合わせた造語。令和3年ごろから新社名の検討を始め、700以上の候補の中から選んだ。外部に漏れることがないよう取締役などの限られたメンバーで話し合った。

 三野社長は「奏でるには『多様性』や『協調』に加えて、物事をやり遂げるという『挑戦』の精神も含まれる。これに諸先輩が切り開き、われわれが新たに切り開く『道』を合わせて企業理念を表現した」と話す。事業説明ではなく、理念を表すための社名へとすることで、80年ぶりの大きな決断を下した。来年6月の株主総会を経て正式に変更が決定する。

 東京商工リサーチによると、4年度に社名を変更した企業は1万9217社で、使用する単語にはカタカナやアルファベットが増え、「工業」や「日本」などの漢字が減少した。最も増加した単語は「ホールディングス」で、「テック」や「ソリューション」などの事業を表すものも増加数で上位となった。

 企業の広告・宣伝に詳しい近畿大経営学部の川村洋次教授は「社名変更には新しい企業イメージを形成できるメリットがある一方で、社名への信頼という資産を手放すリスクもある」と指摘する。社名を変更する際は「TOPPAN」のように、これまでの社名や事業との連続性を意識したものにするのが一般的で、「カナデビアという名称はかなりチャレンジング(挑戦的)。世間への浸透だけでなく、社員に受け入れられる施策が重要になる」と話した。(桑島浩任)

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