警察庁にサイバー犯罪専門の“特捜部”が誕生する。正式名称は、サイバー特別捜査部。国内では昨年、フィッシングのメールやサイトによるインターネット・バンキングの不正送金被害が激増するなど、サイバー空間を悪用したハイテク犯罪の発生件数が拡大。捜査に国際協力が欠かせない中、体制強化だけでなく、各国捜査機関と格を合わせる狙いもある。
総人員300人に
開会中の通常国会に提出された政府の令和6年度予算案には警察庁分として、サイバー特別捜査隊の部への格上げと、増員による体制強化を柱とするサイバー対策費総額49億6200万円が盛り込まれた。
これにより、4月にサイバー特捜隊がサイバー特捜部に昇格することが事実上決定。専従員は100人から約30人増員され、47都道府県に設置された情報通信部で解析を担当する職員の兼務を含め総人員は300人程度となる。
ネット上の仮想空間を主戦場とするハイテク犯罪が国際的に広がりを見せる中、警察庁は令和4年4月に内部部局のサイバー警察局を新設。同時に警察法改正で戦後初の国の「捜査機関」として発足させたのが、サイバー特捜隊だ。
独自の捜査権に基づき、外国捜査機関との国際共同捜査に本格着手したが、システム破壊や情報改竄(かいざん)などのサイバー攻撃を仕掛ける犯罪集団の技術力、犯行手口の進歩に直面し、わずか2年で体制強化を迫られた形だ。
交渉相手と同格
サイバー特捜部は特別捜査課と情報分析を行う企画分析課の2課で構成。トップの階級は隊長の警視正から、部長となるのに伴って警視長に昇格する。警察幹部は「技術力や能力の高い職員を集約して増員する体制増強は最も重要だが、部への格上げには別の意義がある」と打ち明ける。
国際的な捜査協力体制を構築する上で、カウンターパート(交渉相手)との関係性は“同等”であることが絶対だからだ。日本の首相が外交交渉で他国の外相をカウンターパートにすることはなく、あくまでも大統領か首相なのだ。
際立つ「英訳」の印象
他国の捜査機関と交渉や情報交換、会議を行う際、肩書は重要。その印象は、日本語よりも英訳されると一層際立つ。
隊長が現場の責任者を指す「Captain」なのに対し、部長は全体の管理者を意味する「Director」となる。捜査関係者は「見下されることはないが、同等の肩書でなければ対応に影響する可能性はある」と吐露する。
過去には、室長という肩書が主任を意味する「Chief」などと翻訳された場合、誤解を与えることなどから、内閣安全保障・危機管理室長と内閣情報調査室長をそれぞれ内閣危機管理監と内閣情報官に改称、待遇向上が行われている。
警察OBは「特捜部と聞くと東京地検特捜部がまず頭に浮かぶ。決して名前負けしない活躍をしてくれるはずだ」と期待を寄せている。
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