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ホンダと日産の提携、狙いは「量の競争力」 収益性の課題解消へ効果は未知数

両社が協業に踏み込んだのは、収益体質の大幅な改善という共通課題を抱えているためだ。規模を拡大することでコストを抑制し、攻勢を強める新興メーカーに対抗する。

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産経新聞

 日産自動車とホンダが15日、電気自動車(EV)などの分野で、戦略提携の検討を始める覚書を結んだ。両社が協業に踏み込んだのは、収益体質の大幅な改善という共通課題を抱えているためだ。規模を拡大することでコストを抑制し、攻勢を強める新興メーカーに対抗する。

トヨタに及ばぬ利益率

 令和5年4〜12月期の営業利益率をみるとホンダの四輪事業は4.6%、日産は5.2%で、トヨタ自動車(12.5%)には遠く及ばず、軽自動車を主力とするスズキ(9.0%)にも後れを取っている。ガソリン車並みの収益性のハイブリッド車(HV)の販売が好調なトヨタや、トップシェアを持つインド事業が拡大するスズキに対し、ホンダと日産には販売台数を牽引(けんいん)する収益成長の軸が見当たらない。

 一方で、ホンダと日産が脱炭素戦略の軸とするEVでは、中国の比亜迪(BYD)など新興メーカーが勢力を拡大。BYDの昨年の総販売台数は300万台を突破し、ホンダが410万台、日産が355万台を見込む両社の5年度の販売台数に既に迫っている。


記者会見するホンダの三部敏宏社長(手前)。奥は日産自動車の内田誠社長=15日午後、東京都港区(斉藤佳憲撮影)

両社長が口にした危機感

 15日会見したホンダの三部敏弘社長と日産の内田誠社長はこうした市場環境への危機感をそろって口にした。

 三部氏は「電動化や知能化の技術革新が従来の(市場の)構造を破壊している。新興メーカーの攻勢は極めて速く、強力だ」と指摘。その上で、今後の競争では「スケールメリットが重要な観点で、特に電動化・知能化の領域は台数増によるコスト低減効果が非常に大きい」と強調し、日産とEVの基幹部品などを共通化することで、BYDや米テスラなど新興勢に対抗する「量の競争力」を確保する思惑をのぞかせた。

 日産にとってもホンダと手を組む大きな狙いは規模の効果だ。同社のカルロス・ゴーン元会長は資本提携先の仏自動車大手ルノーとの部材の共同購買を推進し、規模の効果によるコスト削減で収益力を高めた。だが、日産はルノーとの資本関係を対等に見直すのに伴い昨年、共同購買の契約を解消した。市場競争から脱落しないために「スピード感が問われている」(内田氏)中、新たなパートナーとしてホンダに白羽の矢を立てたわけだ。

 ただ、両社の協業の具体化はこれからで、トヨタやBYD、テスラなどに対抗できるコスト低減効果を生み出せるかは未知数だ。両社の開発陣が自社の技術にこだわれば協業は限定的にとどまる可能性もある。(池田昇)

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