スポーツ界に広がるAIの波 判定補助、トレーニング支援から運営まで
近年のスポーツ界では、人工知能(AI)を中心とした科学技術が急速に広がってきた。審判の判定補助から選手育成、運営面に至るまで、技術の進化がスポーツの現場を急速に変革している。
26日に開幕するパリ五輪。近年のスポーツ界では、人工知能(AI)を中心とした科学技術が急速に広がってきた。審判の判定補助から選手育成、運営面に至るまで、技術の進化がスポーツの現場を急速に変革している。
富士通は、国際体操連盟(FIG)と共同で審判の採点支援システムを開発し、昨年の世界選手権(ベルギー・アントワープ)で初めて全10種目に導入した。複数のカメラで多角的に撮影した選手の演技映像を用いて、AIが骨格や関節の位置を瞬時に判別するなどして、技の判別を行っていく。審判員の判定を補助し、公平性を高める狙いがある。
システムはさらに改良され、一部で選手のトレーニング支援に先行活用されている。足の開脚角度などを数値で確認できることで理解を深めるだけでなく、体操が盛んでない国や地域でも高いレベルの選手育成につながる。同社は「リモートでの選手指導なども可能になり、選手人口の増加や選手層、国の広がりが期待できる」と期待する。
すでに選手強化に使用されているケースも。トランポリンでは、AIを使って跳躍の高さや演技中の体の動きなどを判別する機材を国立スポーツ科学センターに設置。数値やグラフなどで修正点を見いだし、選手強化をアシストしている。
柔道では、海外での試合映像なども用いて約5000人の選手をデータ化。相手の傾向を知り、対策につなげることで試合を優位に進める効果が期待される。
パリ五輪では、監視カメラ映像をAIが分析するシステムを導入して警備体制を強化。AIなどの技術の活用は運営面にも広がっている。国際オリンピック委員会(IOC)では、今年4月に「五輪AIアジェンダ」を発表。1つの大きな戦略として掲げた。今後もスポーツ界で、AIが大きな役割を担っていきそうだ。(小川寛太)
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