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自動車各社が新興企業に熱視線、投資を活発化 「今までの延長線では勝てない」

自動車大手で、スタートアップ(新興企業)や異業種と連携する動きが広がっている。

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産経新聞

 自動車大手で、スタートアップ(新興企業)や異業種と連携する動きが広がっている。スズキやトヨタ自動車は自己資金によるファンドなどを通じたベンチャー投資を活発化、ホンダは今年から新事業創出支援の社内制度を一般に開放した。業界団体の日本自動車工業会(自工会)も、15日から千葉市の幕張メッセで開く企業向け自動車ショー「ジャパンモビリティショービズウィーク2024」で車各社とスタートアップの連携を後押しする。

ロボやAI関連に出資

 スズキは今月、自己資金ファンドを通じて自動配送ロボット開発のLOMBY(東京都品川区)に出資した。スズキは5月に、小型電動車両の隊列自動運転システムを開発する米ベンチャー「グライドウェイズ」にも出資し、6月には自動運転ソフト開発のティアフォー(名古屋市)と資本提携している。

 トヨタも今春、米国に拠点を置く自前ファンドの運用資産を3億ドル(約450億円)追加し、人工知能(AI)や脱炭素などの先端技術を持つスタートアップへの投資を強化した。

 自動車大手がスタートアップなど社外との連携に意欲的なのは、車の電動化・脱炭素化に伴って事業領域がITやエネルギー・資源などに拡大する構造変化が起きているからだ。

 次世代の電気自動車(EV)に、出資先の米スタートアップのAI技術を導入するホンダの三部敏宏社長はこの構造変化に対し「今までの自動車ビジネスの延長線上では新興勢力に勝てない」と危機感を示す。


ホンダの三部敏宏社長は脱炭素に向けて「既存の価値観の延長線上ではダメだ」と話す=2日、栃木県芳賀町

 同社では知見を広げる新たな試みとして、社内向けだった社会課題の解決に役立つ新事業の創出支援制度「IGNITION(イグニッション)」で一般公募を始め、介護支援機器開発スタートアップ、Qolo(コロ、茨城県つくば市)の代表者の提案など3件への支援を決めた。

 コロは、起立や長距離歩行が困難な下肢運動機能障害者向けに「立ち上がれる電動車いす」を開発しており、その取り組みを、着座型で両手が自由に使えるホンダのパーソナルモビリティ「UNI−ONE(ユニワン)」の担当技術者が支援する。イグニッション制度を推進する中原大輔課長は「支援者に選ばれることはエンジニアの刺激になっている」と話す。

 同社は、この制度をジャパンモビリティショービズウィークでも紹介する。

エネルギー分野に進出

 一方、車の電動化は異業種の事業改革にも結び付いている。エネルギー分野はその一つで、電力会社のJERAは、トヨタと使用済み車載電池を蓄電システムとして電力網に適用する実証実験に取り組んでいる。

 三菱商事も、ホンダと共同出資で設立した新会社が今月以降、EV電池のリースや蓄電システムへの転用などの新事業を展開する予定。また、EVを顧客との接点に、日産自動車が12月から大阪ガスと組んで、再生可能エネルギー由来の電力を提供する電力小売りに乗り出す動きもある。(池田昇)

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