陸運大手が他企業の脱炭素化を後押しする事業を進めている。EV(電気自動車)の導入を検討する企業に向けたコンサルティングや、二酸化炭素(CO2)の排出量の算出サービスなどだ。脱炭素への潮流が強まる中、先行して取り組んできた知見を生かし、ノウハウの少ない企業に売り込みを進める。
ヤマトホールディングス(HD)は今月1日、企業に商用EVを貸し出し、脱炭素計画の立案まで支援するサービスを始めた。
同社では約10年前から集配用にEVトラックの導入を進めており、現在約2300台を保有する。充電器の設置場所選定や補助金申請、車両の維持管理など、利用者として蓄積したEV関連のノウハウがある。今後、社内運送や営業用にEV導入を検討する他企業への支援に生かす。
荷主ら顧客の脱炭素化に向け、日本通運の持ち株会社「NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)」は、国内輸送に伴うCO2排出量、運賃、到着までにかかる期間などを、輸送手段ごとに算出するサービスを提供している。顧客が輸送をトラックから、排出量の少ない鉄道などに切り替えるのを後押しする。
今年5月、CO2排出量算定サービスを手掛けるベンチャー企業に出資。将来的に、輸送以外の過程における排出量も合わせて算定できるようにする考えだ。
一連の事業は脱炭素化の潮流を受けたものだ。国内では今年度、エネルギー消費量の多い大企業などに対しCO2の排出量や、非化石燃料由来の電力の使用割合の開示を求める制度が本格的にスタート。各種規制は年々強まっている。
再生可能エネルギーの拡大も見込まれ、セイノーホールディングスは10月、顧客の脱炭素化に向けた専門チームを稼働。再エネで発電した電気をためる大型蓄電池などの輸送を増やす方針を決めた。安全上、扱いの難しいEV用のリチウムイオン電池の保管・輸送を行ってきた経験を生かす。
国土交通省によるとトラックなど貨物自動車のCO2排出量は、過去30年でピーク時の1996年度の1億300万トンから、2022年度は7300万トンへと減少。燃費性能の向上だけでなく、運送の効率化など業界の自助努力も後押ししており、今後こうした実績のある陸運業界のノウハウに注目が集まる可能性がある。(織田淳嗣)
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