ドライバー不足で「共同輸配送」が加速 ヤマトHDと富士通が発表、NECや日本製紙も
物流業界のドライバー不足に対応するため、複数荷主の荷物を混載する共同輸配送の取り組みが加速してきた。
物流業界のドライバー不足に対応するため、複数荷主の荷物を混載する共同輸配送の取り組みが加速してきた。ヤマトホールディングス(HD)と子会社の「サステナブル・シェアード・トランスポート(SST)」、富士通は27日、荷主や物流事業者をマッチングする共同輸配送サービスを2月に開始すると発表した。NECも昨秋から同様のサービスを始めており、異業種による共同輸配送の動きが広がりそうだ。
運転手の「高齢化」強調
SSTと富士通は2月から共同輸配送システムを稼働させ、新サービス「SST便」を提供する。同システムは荷主の出荷情報や物流事業者の運行予定をベースに最適な輸配送計画を作成し、ドライバー不足の解消やトラックの稼働率の向上などを目指している。
ヤマトHDの長尾裕社長は27日に東京都内で開かれた記者会見で、トラック運転手の高齢化問題を指摘した上で「SSTの取り組みが広がるのは非常に意義がある」と強調した。
昨年5月にヤマトHDは物流の効率化に向け、SSTを設立した。富士通が基盤システムを提供する。「今後は人工知能(AI)を使い、最適な輸送手段の組み合わせや効率的な倉庫スペースの活用が実現できる」(富士通の時田隆仁社長)。
SST便は、まず宮城県から福岡県間で1日16便を運行する。標準パレットのスペース単位で利用できる「定時運行」「中継輸送」「混載」による幹線輸送で提供。2026年3月末までに80便まで路線を拡大する。鉄道や船舶も使い、輸配送エリアを広げる。
ヤマトグループは約170万社の法人顧客を持ち、3500社以上の物流事業者と協業する。これらの基盤も活用し、業界や業種を超えて、企業にシステムへの参加を呼びかける。
「2024年問題」深刻
一方、NECも昨秋に共同輸配送サービスを始め、主要都市間のサプライチェーン(供給網)構築を進める。日本製紙やキリンビバレッジ、ドラッグストア大手のスギ薬局、インターネット通販のアスクル、建材大手のYKKAPの異業種5社も共同輸配送の実現に向けた検証を行っている。
国内では昨年4月にトラック運転手の残業規制が始まり、物流が滞る「2024年問題」が深刻化している。NX総合研究所の調査によると、何も問題の対策を行わなかった場合に30年度の輸送能力は19年度比で34.1%不足する可能性があると試算している。(黄金崎元)
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