警察・自衛隊の合同拠点新設へ 能動的サイバー防御で東京・市谷に
政府はサイバー攻撃に先手を打って被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」を巡り、サーバー侵入や無害化を担う警察、自衛隊の実動部隊を同じ拠点で運用する方針を固めた。
政府はサイバー攻撃に先手を打って被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」を巡り、サーバー侵入や無害化を担う警察、自衛隊の実動部隊を同じ拠点で運用する方向で検討に入ったことが29日、分かった。拠点は防衛省がある東京・市谷の防衛省近くに新設する。同じ建物で勤務させることで平時から連携を深め、サイバー攻撃への備えを強化する狙いがある。
複数の政権関係者が明らかにした。
政府は今国会に能動的サイバー防御を導入するための関連法案を提出する。法案概要によると、攻撃元への侵入・無害化は原則警察が担う。外国勢力による国や自治体、重要インフラなどへの「極めて高度に組織的かつ計画的」な攻撃には、首相が自衛隊に「通信防護措置」を命令できるとしている。
自衛隊はサイバー攻撃への対応に特化した専門部隊を持つが、人員は昨年度末時点で約2千人にとどまり、中国(約3万人)や北朝鮮(約6800人)と比べて少ない。合同拠点での運用を通じて、警察、自衛隊の連携を円滑にし、限られた人手を有効に活用したい考えだ。
政府はサイバー防御の司令塔として、内閣官房に来年度、「国家サイバー統括室」を新設する。サイバー統括室が国家安全保障局と連携し、事案の内容に応じて、攻撃元への侵入・無害化に関する警察と自衛隊の役割分担を調整する。
政府は令和4年に改定した国家安全保障戦略で、サイバー防衛能力を「欧米主要国と同等以上に向上させる」と掲げた。9年度末までに自衛隊のサイバー部隊を約4千人に、従事する要員全体で計約2万人に拡充する方針だ。
国内重要インフラへのサイバー攻撃は後を絶たない。日本航空は昨年末の混雑期にサイバー攻撃の標的となり、国内、国際線に遅延が発生した。NTTドコモではシステム障害が起き、三菱UFJ銀行でもインターネット取引が利用しにくくなる不具合が広がった。
能動的サイバー防御 サイバー攻撃に対し、先手を打って相手側のサーバーに入り込み無害化することを柱とした活動。官民の情報共有、攻撃者が悪用するサーバーの検知も含む。「アクティブ・サイバー・ディフェンス」とも呼ばれる。政府は能動的サイバー防御を可能とする法案を今国会に提出する方針で、導入には与党だけでなく、国民民主党も賛意を示している
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