DeNA、ベイスターズを日本一にした「AI強化プロジェクト」を初公開 攻守でフル活用
IT大手のディー・エヌ・エー(DeNA)は5日、技術者向けのオンラインイベントで、傘下のプロ野球DeNAベイスターズを26年ぶり3度目の日本シリーズ優勝に導いた「人工知能(AI)強化プロジェクト」の全貌を初めて明らかにした。
IT大手のディー・エヌ・エー(DeNA)は5日、技術者向けのオンラインイベントで、傘下のプロ野球DeNAベイスターズを26年ぶり3度目の日本シリーズ優勝に導いた「人工知能(AI)強化プロジェクト」の全貌を初めて明らかにした。AIによる解析で、選手の能力をより細かく評価し、選手の意識向上や強化ポイントの具体化などにつなげた。ベテランの再生から若手の育成まで、幅広く効果を発揮したという。
スポーツ・スマートシティ事業本部の對馬誠英本部長は「社内では、優勝する機会があったら(プロジェクトについて)話したいといっていた。ついにその時がきた」とアピール。「ベイスターズは収益拡大を明確な目標に据えていて、スタッフ、選手も意識して取り組んでくれている」と強調した。
打撃部門では、ハイスピードカメラ4台で撮影した選手の動きを短時間で解析するためにAIを利用した。シーズンオフごとに1、2件しか解析結果を出せなかった数年前に比べ、昨シーズンは毎月10〜20件を選手やコーチにフィードバックしたという。シーズン序盤の4、5月に、OPS(出塁率と長打率を合わせた数字)が0.731と不調だった牧秀悟選手が6、7月に0.899に復調した一因となった。
投手部門では、映像から捕手のミットの動きを読み取って、捕手が要求したところに投球できているかを判別した。打者が苦手とするコースに的確に投げ分けることができる投手の「コマンド」能力を可視化した。
一軍経験がない投手の起用にも貢献
解析データを蓄積することで、一軍選手に求められる能力水準も明確になり、若手選手の育成にも一役買った。一軍経験がない投手でも期待値通りの活躍をみせ、大胆な投手起用ができるようになった。ベイスターズ投手陣の中では、森原康平投手が率先して活用し、他の投手にも広がっていったという。
捕手部門では、投球を後ろにそらさないようにする能力を正確に評価できるようにした。AIが1球ごとに捕球の難しさを推定。記録上の捕逸数だけでは見えなかった捕手の能力を正確に測定することで、具体的な指導につながった。
AI技術開発部の大西克典さんは「われわれは地図アプリみたいなもの。選手の現在地と目標地点までの正確な距離をはっきりと示して迷子を防ぐ」と解説した。
ベイスターズは、チームが強くなり収益が上がることで、さらにチームを強化できる循環を重視しているという。観客動員数は球団経営に乗り出した2012年の117万人から、新型コロナウイルス禍を除いてほぼ右肩上がり。24年は過去最高の236万人と倍増している。(高木克聡)
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