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本田技研工業のDXはボトムアップとトップダウンで“Hondaらしく推進”デジタル変革の旗手たち(1/2 ページ)

日本の製造業は強い現場によって支えられてきたことはよく知られている。Hondaもその代表的な企業の1社だ。トップダウンだけではなく、ボトムアップのアプローチも取り入れ、デジタル技術を活用して現場の業務改善に取り組む「オペレーションDX」を推進している。バックオフィス領域を中心とした各部門1人ずつ、約400人の「トップガン」と呼ばれる部門DX推進リーダーを中心にビジネス変革を目指す同社の取り組みについて、ITmediaエグゼクティブ プロデューサーの浅井英二が話を聞いた。※本記事におけるDXは主に、業務システム周辺をスコープとした「オペレーションDX」の取り組みを意図しています。

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 100年に1度の大変革期といわれる自動車業界において、第2の創業期と位置付け、2050年を見据えた総合モビリティカンパニーであり続けるための取り組みを推進している本田技研工業株式会社(以後 Honda)。モビリティを進化させるために同社では、「二輪」「四輪」「パワープロダクツ」「船外機」「航空機」といったさまざまな製品とデジタル技術を組み合わせることで新たなサービスや価値を提供すべく、DXの「本丸」ともいえるビジネスモデルの変革に取り組んでいる。


Hondaが目指すモビリティ

 一方、 HondaのDX推進では、働く社員の身近な業務にも焦点を当て、ボトムアップでその効率化に力を注いでいる。デジタル技術を活用した業務プロセスの断捨離や改革を通じて、ビジネスモデル変革のスピードと事業効率を高めるのが狙いだ。「トップガン」と呼ばれる部署ごとのDX推進リーダーを育成するとともに、併せて社内オンラインイベント「Honda DX Expo」などを通じ、DX推進のための風土醸成、体制構築、および個別業務の効率化に取り組んできた。

 2025年からは、DXのさらなる民主化加速に向けた「DX企画相談会」を運営することで、これまでの個別業務の効率化から、より広範囲で部門横断レベルの業務改革に向けたソリューションへと拡大しようとしている。 Hondaが取り組むDX推進について、コーポレート管理本部 デジタル統括部 デジタル基盤改革部 イノベーション推進課のチーフエンジニアを務める木村裕貴氏とアシスタントチーフエンジニアの安藤健一氏に話を聞いた。

「トップガン」の育成でオペレーションDXを推進

  Hondaでは、2021年より全社的なDX活動を推進するための組織を立ち上げ、データの価値を最大化するデジタルプラットフォームの構築、既存業務の効率的実行、DX推進体制の構築に取り組んできた。取り組みの1つである既存業務の効率的実行では、デジタルの活用によりルーティンワークを自動化し、余剰時間を創出することで、社員一人ひとりが創造力を発揮して、新しい価値を生み出せる環境を実現し、間接部門の業務を30%効率化するためのオペレーションDX(ODX)を推進している。


オペレーションDX(ODX)

 木村氏は、「ODX推進では、トップガンを育成し、業務効率化のための各種ツールを拡充しながら、現場の担当者が自律して業務を改善できる体制の確立に向けた支援を実施しています。トップガンは、社内のデジタル企画と業務の効率化を担える、つまりITにも抵抗がなく、ビジネスもよく理解している人材となります。当初はトップガンを育成すればODXが進むと考えていましたが、それだけではうまくいきませんでした」と話す。


本田技研工業 コーポレート管理本部 デジタル統括部 デジタル基盤改革部 イノベーション推進課 チーフエンジニア 木村裕貴氏

 試行錯誤する中、トップガン育成の「前工程」と「後工程」にも着目、仮説検証の末にたどりついたのが、組織・マネジメントの理解の醸成、DXツール実装まで一気通貫の成功体験の提供、そして社員を巻き込むための取り組み強化という3つの戦略だった。木村氏は、「トップガンのコンセプトは、業務を理解していて、DXツールも使いこなせる、いわば“スーパーマン”になりうるヒトだったので人選から難しかったですし、そもそもトップガンになってほしい社員も忙しいので、その人選には上司の理解も必要でした。さらに、現場を巻き込むモチベーションの向上も重要でした」と話す。

 約3年間、センターオブエクセレンス(CoE)の役割を担い、トップガンの育成を担当した安藤氏は、「ノープレー・ノーエラーを排せ」という Hondaの企業風土に基づいて試行錯誤を続ける。「当初はトップガンの意義が社内に浸透していなかったという課題がありました。トップガンが頑張っても孤立してしまっては現場が自律的に成果を上げていくことは難しくなります。そこで組織として取り組むべき体制や定義を改めて周知し、部門長に対する依頼も徹底することにしました。トップガンを指名して任せっきりにしないために、トップガンの研修の進捗を部門長に定期的にレポートするようにもしました」と安藤氏は話す。


本田技研工業 コーポレート管理本部 デジタル統括部 デジタル基盤改革部 イノベーション推進課 アシスタントチーフエンジニア 安藤健一氏

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