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東急の堀江正博社長、渋谷の夜「エンタメ拡充を」 沿線は「健康年齢」高める

最もインバウンド(訪日客)が訪れる街として、各種調査で名が挙がるのが東京・渋谷。駅周辺では「渋谷サクラステージ」「渋谷ストリーム」と大規模な再開発が進み、人の流れも変わりつつある。街づくりをリードしているのが、鉄道を中心に不動産から小売業まで幅広く扱う東急のグループだ。街や沿線をどのような形にしたいのか。堀江正博社長に聞いた。

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産経新聞

 最もインバウンド(訪日客)が訪れる街として、各種調査で名が挙がるのが東京・渋谷。駅周辺では大規模な再開発が進み、人の流れも変わりつつある。街づくりをリードしているのが、鉄道を中心に不動産から小売業まで幅広く扱う東急のグループだ。街や沿線をどのような形にしたいのか。堀江正博社長に聞いた。


東急の堀江正博社長=東京都渋谷区(酒井真大撮影)

――今、渋谷で大きな再開発が進んでいる

 「渋谷の再開発は、オフィス街でビルを建て替える丸の内などと違い、区画整理から始まっている。架線を付け替え、人の流れる動線を作り、回遊性、利便性、安全性を高めている」

――渋谷はインバウンドが増えている

 「東京都の調査でも、最も外国人がやってが来る街は渋谷だ。(2019年オープンの)展望施設『渋谷スカイ』は9割方はインバウンドが占める。渋谷といえばスクランブル交差点、ハチ公、渋谷スカイが定番になってきた。観光地として認知されだしている」

夜のアクティビティを強化

――今後、渋谷をどのような街にしていきたいか


(酒井真大撮影)

 「エンターテインメントを拡充していきたい。特に夜のアクティビティだ。渋谷駅に最も近いクラブが『MAGNET by SHIBUYA109』のフロアで週末営業しているが、これもインバウンドの皆さんに来てもらえるナイトタイムの選択肢。もともと、日本のクラブは渋谷から始まっている。再開発を進めると、渋谷ならではのクラブやミニシアター、酒場がなくなっていきがちだ。文化をうまく残せる形を作りたい」

鉄道事業も回復

――今年度は中期経営計画の初年度だが


(酒井真大撮影)

 「予想以上に(スタートは)良い。もともと新型コロナウイルス禍からの回復途中に計画を作っており、かなり保守的な内容だった。牽引(けんいん)したのは鉄道の回復。外出の需要が増え、インバウンドが渋谷に相当来ている。ただ定期券は戻っていない。働き方改革もあり、今後戻ることはないだろう。その分『普通(乗車)券』が増えている」

――ホテルも好調だ

 「ホテル事業は今、運営受託に切り替えている。全国津々浦々に資産を持つと(帳簿上)重い。フィー(手数料)ビジネスとしてマネジメントコントロールを進めている。これは外資が強みを持っていることだが」

――外資に対抗できる強みは

 「グループが持つ、小売りやエンタメを組み合わせたプロダクト(商品)を提供できる。例えば、『東急歌舞伎町タワー』が開業した際に、ホテル客室にアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』と連動したコラボルームを作った。(予約が殺到し)いわゆる“瞬間蒸発”だった」

――グループで各種事業を手がけているが、沿線全体をどうしていきたいのか

 「沿線では『生産年齢』の割合は減っていく。そこで高齢者、子育て世代に雇用機会を提供し、沿線で消費してもらう仕組みを作りたい。例えば企業立病院の東急病院では、大規模ではないが訪問医療を始めた。子育て中の女医さんがおり、フルタイムはできなくても1日4時間の訪問医療ができる。そこで活躍してもらうと、本人も技術を維持しつつ、収入も得られる。こういう事業を伸ばしたい。高齢者でも稼げる沿線にしていけば、住民の『健康年齢』も伸びるだろう」


堀江正博

 ほりえ・まさひろ 慶大法卒。1984年東京急行電鉄(現東急)入社。東京急行電鉄取締役執行役員、東急取締役常務執行役員などを経て、2023年から現職。福岡県出身。63歳。


編集後記

 私鉄の雄、東急の手がける事業は広い。インタビューでも、鉄道事業に依存しない企業の姿が強く感じられた。堀江社長は若手の頃、沿線の区画整理組合の事務の仕事で、工事前に地権者通いを重ねたという。スギの木だらけの場所で、後に花粉症を患ったが、「地元密着の原点だった」と振り返る。名刺には社長に加えて「クリエイティブ・ディレクター」の肩書も。「(スタッフを増やして肩書に)『チーフ』をつけようかと思っている。1人じゃ足りないから」といい、社長になった今も先頭に立って街づくりに取り組んでいる。(織田淳嗣)

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