クローサー、低価格ロボットを開発 箱詰め・箱積みなど、中小工場の自動化を支援
資金力に乏しいことを考慮し、3分の1程度に値段を抑えた箱詰めロボットと段ボール積み上げロボットの2機種を独自に開発。人工知能(AI)を取り入れて最適化を容易にし、生産や出荷作業の負担軽減につなげている。
筑波大学発ロボット系スタートアップ(新興企業)のCloser(クローサー、茨城県つくば市)が、人手不足に悩む中小規模の工場の省力化に一役買っている。資金力に乏しいことを考慮し、3分の1程度に値段を抑えた箱詰めロボットと段ボール積み上げロボットの2機種を独自に開発。人工知能(AI)を取り入れて最適化を容易にし、生産や出荷作業の負担軽減につなげている。ロボットは昨年から食品工場などへ順次出荷を開始。2年後に計150台の販売を目指す。
「女性従業員が多い現場なので大いに喜ばれた」
クローサー製ロボットを導入した半生菓子メーカー、天恵製菓(長野県豊丘村)の岡部茂之・執行役員工場長は期待通りの働きと評価し、作業支援に役立つロボットを積極的に採用していく方針を決めた。
作業負担が大幅改善
同社は、以前から人手不足の解消や作業負担の軽減を図るため、ロボットの導入を模索していた。昨年、東京都内で開催された食品関連機器の総合展でクローサーを知り、実機体験を経て、今年1月に段ボール積み上げロボット「パレタイジー」を工場に導入した。これまで商品が入った段ボールのパレット(荷役台)への積み上げは従業員が手作業で行っていたが、「生産性は3倍」という触れ込み通り、作業負担が大幅に改善。岡部氏は「成果を得た」と得意げだ。
パレタイジーはカメラやセンサーを備え、アームの先に取り付けた吸着パットを使って段ボールを積み上げる。段ボールとパレットの大きさを入力するだけでレイアウトを自動生成し、アームの動作も自動で調整できる稼働ソフトを開発。タッチパネル操作で誰でも簡単に指示を出せるようにした。高さ2.5メートル、幅3.15メートル、長さ1.33メートルで、従業員1人分の作業空間を意識したサイズという。
AIで最適化
価格は1台当たり1千万円台前半。単純比較は難しいが、クローサーによれば他社製だと3千万円程度という。アームや他の部品は主に既製品を調達して組み立て、稼働ソフトはロボットOS(基本ソフト)から独自で作り込む。これにより、工場の特性に合わせて無駄なく柔軟に開発することができ、低価格を実現した。機能改修や更新、拡張も容易だ。
パレタイジーは現在、3社に5台納入した。パレタイジーより先に開発を始めた箱詰めロボット「ピックパッカー」も2月に1台目を納入した。包装された調味料などを正確につかみ、弁当容器などの決められた場所に置くといった細かい作業ができるロボットだ。画像処理にAIを使い、輪郭が曖昧だったり、光沢があったりと認識が難しかった物もつかめるように工夫した。
両機種とも引き合いは増えており、見込み客は100社超に上る。2027年までにパレタイジー100台、ピックパッカー50台の販売を目指す。
筑波大発のスタートアップ
クローサーは筑波大博士課程に在学する樋口翔太代表取締役が、共通の知人を介して知り合い意気投合した米金融大手出身の杉江直哉CFO(最高財務責任者)と、21年に共同で立ち上げた。
幼少期からロボットが好きだったという樋口氏は「大会出場や学術研究で終わりではなく、ロボット技術を社会実装して人の役に立てるようにすることが重要だ」と熱い思いを語る。
ソフトバンクグループの100%子会社で、投資企業のディープコアはクローサーに資金を投じた一社。担当の左英樹氏は「樋口氏は顧客ニーズや課題にしっかり向き合う視野の広い技術者だ。この姿勢が投資判断のポイントだった」と太鼓判を押す。
クローサーは今後、目標達成に向け販売協力会社という“仲間”づくりにも力を入れていく。(佐藤克史)
copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.