広がるリバースメンタリング 部下が上司の先生役に 企業や政党でも導入進む
若い世代の部下がベテランの上司の先生役となる研修手法「リバースメンタリング」が国内で広がっている。上司は部下の方が詳しい先端技術や柔軟な発想に触れられ、部下も上司が考える全社的な経営課題などを身近に共有できるなどの利点が評価されている。
若い世代の部下がベテランの上司の先生役となる研修手法「リバースメンタリング」が国内で広がっている。上司は部下の方が詳しい先端技術や柔軟な発想に触れられ、部下も上司が考える全社的な経営課題などを身近に共有できるなどの利点が評価されている。企業以外の組織でも導入の動きがみられるが、専門家は成果を出すためには安易な導入ではなく、目的の明確化が必要だと指摘する。
4日午後、東京都港区のNEC本社で行われたリバースメンタリング研修には、役員ら32人と新入社員38人が参加した。「社員のウェルビーイング(心身の健康や幸福)が小さく向上する企画」をテーマに、3、4人ずつのチームに分かれて、課題解決につながるスマートフォン向けのアプリを新入社員が主導する形で約2時間かけて開発した。
アプリの発表では「今日行った仕事を登録し、上司や同僚にコメントしてもらいモチベーションアップにつなげる」「日ごろのちょっとした行動を上司や部下が互いにほめあえる場所をつくる」といったアイデアが出された。
同社がこの研修を行うのは、2024年度に続き2回目。入社数年で離職する若手社員が少なくない中、若手と役員がフラットに話し合える機会を増やし、風通しの良い組織にするなどの狙いがある。
「若い人から学ぶ意義大きい」
役員の井手伸一郎さん(50)は「(立場の)上とか下とか関係なく、若い人から新しいことを学ぶ意味でも意義は大きい」と話す。新入社員の田中貴大さん(23)は「役員の方は思ったより話しやすかった。同期とかでは思いつかないアイデアも示してくれた」と笑顔を見せた。
リバースメンタリングは1990年代に米国で始まったとされる制度で、日本では、みずほフィナンシャルグループが2023年度から導入。資生堂や三菱マテリアルなどでも導入している。一部の政党でも、若年層の意見を政策に反映させる目的で導入されている。
安易な導入に警鐘も
第一生命経済研究所の福沢涼子副主任研究員は、リバースメンタリングの目的は「世代間ギャップを活用して双方が学び合うこと」だと指摘。新規事業の課題解決に若手の意見を反映させることや、世代間コミュニケーションの円滑化に役立つという。ただ、こうした目的を明確に示さないと参加者の理解を得られず、逆に「シニア層と若年層の双方にストレスをためることにもなりかねない」と安易な導入に警鐘も鳴らす。(永田岳彦)
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