「闇バイト強盗」撃退する進化した家 警備業の人手不足の裏で進む防犯市場への異業種参入
住宅の防犯対策を強化するホームセキュリティー市場が拡大している。子供や高齢者の見守り需要に加え、「闇バイト強盗」が昨年相次ぎ、防犯意識が急速に高まっていることが背景にある。
住宅の防犯対策を強化するホームセキュリティー市場が拡大している。子供や高齢者の見守り需要に加え、「闇バイト強盗」が昨年相次ぎ、防犯意識が急速に高まっていることが背景にある。警備業界が深刻な人手不足にある中、住宅メーカーやIT業界などが商品・サービスを強化し、異業種連携も進む。
侵入窃盗21年ぶり増
住宅を狙った窃盗犯罪が治安を脅かしている。警察庁の調査で侵入窃盗の認知件数は2002年をピークに減少していたが、23年は前年比20.9%増の4万4228件と21年ぶりに増加。さらに昨年、首都圏で「闇バイト強盗」が相次ぎ、住宅の防犯対策に関連した市場が拡大している。
民間調査会社の富士経済(東京)は、ホームセキュリティーサービス市場が24年に前年比3%増の1447億円、27年には1570億円まで伸びると推計。27年は20年と比べて2割以上増える計算だ。国内市場の「潜在需要は依然高い」(担当者)として、堅調に推移すると指摘する。
AI活用したサービス
警備業界が深刻な人手不足にある一方、高齢者や子供の見守り、費用を抑えた防犯対策のニーズは高まっており、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)を活用した異業種による商品・サービスが広がっている。
パソコン周辺機器メーカーのエレコムは監視カメラのほか、センサーで人の動きを追尾する防犯ライト、音と光で周りに緊急事態を知らせる警報器などを開発し、製品数は50品目と5年前から5倍に増やした。
防犯と暮らしは密接につながっていることから、関連分野での異業種連携も相次いでいる。
大阪ガス子会社で警備業の大阪ガスセキュリティサービス(OSS)は住宅メーカーの創建(大阪市中央区)と提携。戸建て住宅のリフォームを一定額以上契約すると、OSSのセキュリティーサービス「アイルス」の初期費用を無料にする特典を6月に始めた。
アイルスには、人が放出する遠赤外線を天井のセンサーが感知し異常時に自動通報したり、不在時でも窓やベランダのドアなどに取り付けたセンサーが開閉の動きで異常を感じた際に通報したりするサービスがある。
OSSの担当者は「富裕層に限らず一般層の防犯意識も高まっており、費用を抑えることで利用を増やせる」とみる。
防犯行動で料金変動
セコムは米アップルの腕時計型端末「アップルウオッチ」と連携し、身の危険を感じた際にアプリで緊急通報や駆けつけ要請ができるサービスを23年から提供している。
一方、積水ハウスは博報堂やALSOKと組み、防犯行動をAIで解析して料金に反映させる世界初の防犯サービスを24年12月に始めた。扉がこじ開けられるなど異常の覚知で警備員が駆け付けるサービスだが、在宅時の行動で月額料金が変動する。アプリで防犯状態を3段階で評価し利用者に助言するため、担当者は「防犯意識や行動の改善につながる」と話す。(田村慶子)
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