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下水道管にもドローンの目 有毒ガス下でも作業可能、3Dマップもリアルタイムで作成可能

国内で下水道管点検時の事故が相次ぐ一方で、標準耐用年数を超える下水道管が年々増加するなど、インフラの劣化が表面化する中、ドローンを使って下水道管内を点検する試みが全国の現場で実施されている。

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産経新聞

 国内で下水道管点検時の事故が相次ぐ一方で、標準耐用年数を超える下水道管が年々増加するなど、インフラの劣化が表面化する中、ドローンを使って下水道管内を点検する試みが全国の現場で実施されている。作業員が立ち入る点検に比べ有毒ガスを吸い込む恐れがないのが最大の利点。技術職の担い手が不足する中、作業の効率化や省人化に加え、技術の最新化による精度の高い点検、調査が可能になるなどのメリットが期待されている。


下水道管点検に使用されるドローン。手元のモニターにはドローンが撮影した温度センサーの映像が映されている=大阪市

 ドローンを使った点検システムなどを手掛ける「ブルーイノベーション」(東京都文京区)は今年4月、奈良市の下水道管で、レーザー測距装置や高解像度カメラなどを搭載したドローンによる点検飛行を実施した。

 同社は平成11年創業。ドローンを使った下水道点検技術が、国土交通省が策定した先進技術導入例として自治体など水道事業者にカタログとして示されており、この業界で先行している企業の一つだ。30年にスイスの企業と提携し、屋内の狭小空間での飛行に最適なドローンの独占販売権を得た。

 導入を前提とした点検飛行では、ドローンはマンホールから進入し、操縦者は地上の安全な場所からモニターを使って操作。マンホールから奥行き約45メートルの地点までを約15分で点検、詳細な3Dマップをほぼリアルタイムで作製することが可能となった。

 飛行した経路や異常箇所を撮影した写真はパソコン上の3Dマップ上に示される。別のセンサーを取り付ければ放射線量の測定や化学物質の検知もでき、原子力発電所や化学工場などでの点検でも活躍が期待できるという。

 何よりの利点は安全性だ。下水道管などにたまる硫化水素など有毒ガスを吸い込むなどする労災事故はたびたび発生しているが、安全な場所から操縦できるドローンなら危険性を回避できる。「将来的にはボタン1つで自動的に点検作業ができる環境も夢ではない」と同社の熊田貴之社長は話す。

 国交省によると、令和5年度末での全国の下水道管路の総延長は約50万キロ。うち標準耐用年数の50年を経過した管路の延長は20年後には約21万キロになる見込みだ。一方で現場を支える技術職員の担い手は減少。同省は下水道管内のドローンによる調査について、10年度から普及段階に入る工程案を示すなど、デジタル技術の社会実装を急いでいる。

 熊田社長は「ベテランが多く退職する時代を迎える中、ドローンならではの安全性や効率性で貢献していきたい」と意気込みを語る。(秋山紀浩)

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