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「睡眠障害」診療科名に追加を検討 日本人はOECD最下位の睡眠不足 厚労省が議論開始

医療機関が掲げることのできる診療科名に「睡眠障害」を加えるかの検討が厚生労働省の専門部会で始まった。

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産経新聞

 医療機関が掲げることのできる診療科名に「睡眠障害」を加えるかの検討が厚生労働省の専門部会で始まった。日本人の睡眠時間は経済協力開発機構(OECD)加盟国中最下位で、睡眠の悩みを抱える人は相当数存在するとみられるが、適切な診療にたどりつけていない“睡眠障害難民”の存在も指摘される。診療科名への追加が実現すれば、受診先を探しやすくなり、早期の治療が期待できる。厚労省は、来年3月ごろまでに議論を取りまとめる方針だ。


1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合

潜在患者数2千万人「受診先が見つけにくい」

 医療機関が掲げることができる診療科名は「標榜(ひょうぼう)診療科」と呼ばれ、医療法で定められる。「内科」「外科」「精神科」など単独で使えるものがあるほか、「内分泌内科」「脳神経外科」など組み合わせで使用可能なものもある。

 睡眠障害は現在、精神科や呼吸器内科など、幅広い診療科で診察が行われている。その一方で、「受診先が見つけにくい」との課題が指摘されてきた。

 睡眠障害は睡眠に関する病気の総称。日中の眠気や居眠りなど日常生活にさまざまな影響を及ぼす場合が多い。

 なかなか寝付けないなどの症状が出る「不眠症」、睡眠時に呼吸が何度も止まる「睡眠時無呼吸症候群」などは睡眠障害の一つ。日本睡眠学会の内村直尚理事長によると、国内の潜在患者数は、不眠症と睡眠時無呼吸症候群だけでも計約2千万人に上るといわれる。

 同学会は今年4月、標榜可能な診療科名に睡眠障害を新たに加えるよう、厚労省に要望書を提出。内科や精神科などと組み合わせ、「睡眠障害内科」や「睡眠障害精神科」などと標榜できるよう求めている。

 内村氏は、「標榜が可能となれば、受診先が分かりやすくなり、早期の診断・治療につなげることができる」と期待する。

ホルモンバランスの乱れや自律神経の不調……生活習慣病リスク

 日本は、「睡眠不足の国」ともいわれる。OECDの2021年の調査報告によれば、日本人の平均睡眠時間は7時間20分ほど。33カ国中最下位で、全体平均より約1時間も短い。

 国は、睡眠時間の目安などを示した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」で、成人について、6時間以上の睡眠の確保を推奨している。だが、厚労省の国民健康・栄養調査(令和5年)では、1日の平均睡眠が6時間未満の人(20歳以上)の割合は、男性が38.5%、女性が43.6%。年代別では、30〜50代男性、40〜60代女性で4割を超える。

 内村氏によると、睡眠不足は、眠気や活力減退など日常生活に悪影響を及ぼすだけでなく、慢性化すれば、生活習慣病のリスクを高める。ホルモンバランスの乱れや自律神経の不調などが引き起こされるためで、肥満、高血圧、糖尿病などにつながる恐れがあり、心筋梗塞や脳梗塞にかかりやすい状態にもなるという。

 一方で内村氏は、「睡眠に問題を抱えていても、受診が必要と思っていなかったり、受診先が分からずに放置したりして、状態を悪化させてしまうケースも多い」と説明。「健康保持には、早期受診、適切な治療が重要になる」と指摘している。(三宅陽子)

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