中国依存の「抗菌薬」、国産化に注力 明治HD傘下が岐阜に新施設 価格競争支援も必須
感染症の治療に不可欠な抗菌薬について、原料と原薬の大半を中国に依存している状況があり、国が経済安全保障の観点から国産化を急いでいる。
感染症の治療に不可欠な抗菌薬について、原料と原薬の大半を中国に依存している状況があり、国が経済安全保障の観点から国産化を急いでいる。過去には輸入が滞り、日本国内で抗菌薬が不足する事態も発生しており、国は2030年ごろまでの自給体制構築を目指す。こうした中、明治ホールディングス(HD)傘下企業が16日、岐阜県に抗菌薬の原料生産の新施設を完成させた。
明治HD傘下の「Meiji Seikaファルマ」(東京)が、岐阜県北方町に建設した新施設では、カビ菌などをもとに原料の生産を行う。12月稼働予定で、年間200トンの原料生産が可能となる。同社は28年までの原薬生産を目指す。
この日、永里敏秋社長は「国産分は平時から一定水準で生産量を維持しておかないと、有事の際に(迅速な供給が)難しくなる」と強調した。
抗菌薬は、細菌を死滅させたり増殖を抑えたりする医薬品。感染症治療や手術時の感染予防に欠かせず、同社は約30年ぶりにペニシリン系抗菌薬の原薬製造を目指す。
日本は現在、ペニシリン系を含む抗菌薬の原料と原薬のほぼ100%を中国に依存している。現地で輸出規制などが起これば、国内の供給が途絶える懸念があり、実際に2019年には中国の製造現場でのトラブルにより国内の抗菌薬が不足する事態が発生した。
政府は経済安全保障推進法に基づき、抗菌薬を特定重要物資に指定。約550億円の予算を確保し、原薬製造のための培養タンク設置などの費用を支援する。支援先として、Meiji Seikaファルマや、塩野義製薬子会社のシオノギファーマ(大阪)を選定。2030年ごろまでに自給体制を整える方針だ。
抗菌薬は薬価が低く、企業だけの取り組みで安定供給を実現することは困難。国には、中国との価格競争に打ち勝つための支援も求められる。(清水更沙)
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