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海底ケーブル、政府が民間支援を強化 切断のリスク、中国シェア拡大で危機感

政府は海底通信ケーブルを巡り、経済安全保障の観点から、民間による敷設や保守にかかる費用の財政支援を進めている。

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産経新聞

 政府は海底通信ケーブルを巡り、経済安全保障の観点から、民間による敷設や保守にかかる費用の財政支援を進めている。米国が中国企業を排除する姿勢を示す中、国内企業が中国などを関連部品の調達先としていないかの調査も行う。


NTTグループの海底ケーブル敷設船「きずな」=長崎市

 政府は半導体など「特定重要物資」の安定供給を支援する経済安保推進法について、海底ケーブルそのものに加え、整備など付随する「役務」を支援対象に拡大する方針だ。来年の通常国会での法改正を目指す。経済産業省も今年5月改定の経済安保に関する行動計画で、新たに海底ケーブルを重要物資に指定した。

 海底ケーブルの世界シェアは、NECを擁する日本と米仏の3カ国3社だけで9割を占めるが、近年は中国企業も政府の支援を受けてシェアを急拡大。中国を巡っては、ケーブル設備を通じた通信傍受の疑惑が絶えない。米政府は中国やロシアなどを「敵対勢力国」と指定し、サプライチェーン(供給網)から排除する方針だ。

 日本政府も足並みをそろえ、国内メーカーの部品調達先に関する実態把握調査を行う。並行して保守体制の増強支援など自律性を高めていく。

 一方、昨年以降は台湾沖や欧州近海で、中露の関与が疑われるケーブルの切断事案が続発。台湾有事の際のリスクも指摘され、自民党と日本維新の会による連立政権合意書には、南西諸島地域のケーブルの強靱(きょうじん)化が明記された。

 三菱総研の小野真之介研究員は「海上自衛隊と連携した防護体制の議論も必要だろう」と指摘する。小野氏によると、2025年時点で日本に陸揚げされている国際海底ケーブルは25本。うち中露につながるものは15本に上る。小野氏は「海底ケーブルのさらなる多重化も検討すべきだ」と語る。


産官学連携、先進技術活用を

大阪経済法科大の矢野哲也教授(国際安全保障)


大阪経済法科大の矢野哲也教授

 政府全体で海底ケーブルに関する支援策が動き出したことは良い傾向だが、トップメーカー保有国の座を分け合う米仏に比べると、まだ遅れている。米政府は国防予算でケーブル作業船を2隻借り上げ、切断被害に備えつつ、遠洋で敷設作業にも当たらせてきた。仏政府は「海底戦戦略」の重要性に着目し、他国企業に買収されていた自国メーカーを昨年末に買い戻して国有化した。

 世界で海底ケーブルは総延長160万キロメートルが稼働しており、2026〜40年には同じ160万キロメートルが新設されるといわれている。今後は国内メーカーの作業船も、敷設や交換、修理と多忙を極める可能性があるが、そうしたときに中露による切断被害が起きた場合、全く対応できない恐れがある。地震などで切断されることもある。

 政府は国内メーカーに対する欧米並みの手厚いサポート体制を急いで構築する必要がある。産官学連携も重要で、例えば切断被害の早期察知に向け、センサーを組み込んだケーブルによる地震監視システムの技術を応用するなど、日本が得意とする先進技術の活用も検討すべきだ。(福田涼太郎)

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