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万博で見せた「未来の交通」実現加速 EVバス、空飛ぶクルマ、予約システム……推進の鍵は

閉幕した大阪・関西万博で掲げた持続可能な社会の実現に向けて、万博会期中に活用された乗り物や予約システムなどの交通インフラを、レガシー(遺産)として社会で実用化する動きが活発化している。

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産経新聞

 閉幕した大阪・関西万博で掲げた持続可能な社会の実現に向けて、万博会期中に活用された乗り物や予約システムなどの交通インフラを、レガシー(遺産)として社会で実用化する動きが活発化している。関西空港では6日、万博で来場者を輸送した電気自動車(EV)バスの運行が始まった。脱炭素社会の実現や生活の利便性向上が期待されるが、「空飛ぶクルマ」のように技術などが十分に追いついていないものもあり、自治体や関係機関が一体となった推進が求められる。

 この日、関西空港を運営する関西エアポートは、空港内でターミナルビルと機体を行き来して旅客を送迎する「ランプバス」にEVバスの運行を開始。いすゞ自動車製など計4台を導入した。


関西空港で旅客送迎用として活用される、大阪・関西万博で来場者輸送に使われていたEVバス =6日午前、大阪府泉佐野市(柿平博文撮影)

 バスは万博の会期中、夢洲(ゆめしま)会場(大阪市此花区)とJR桜島駅(同)を結ぶシャトルバスとして使われた。関西エアポートによると、ランプバスにEVを導入するのは国内では初めて。同社は「再生可能エネルギーを使用したEVバスは、空港全体の脱炭素化にも寄与する」としている。

 ダイハツ工業は、会場内を走った1人乗り電動カート「e−SNEAKER(イー・スニーカー)」の一般販売を開始。運転免許を返納した高齢者らの近距離の移動の「足」としての使用が想定されている。

 岩谷産業は、万博で来場者輸送に活躍した水素燃料電池船「まほろば」を東京都に無償提供する。来年度にも運航を始め、水素燃料の普及啓発イベントに使われる。

 関西の鉄道事業者らが開発したスマートフォン向けアプリ「KANSAI MaaS(マース)」は、公共交通機関や観光地に関し、検索から予約・決済までワンストップで利用できるサービスとして閉幕後も引き続き運用。関西への誘客に寄与するツールとして利用者の拡大を図る。

 一方、実用化が期待されながら道半ばのものもある。万博の目玉とされた「空飛ぶクルマ」は、機体開発や安全性の審査に時間を要し、万博ではデモ飛行にとどまった。


大阪・関西万博会場でデモ飛行を行ったANAホールディングスなどの空飛ぶクルマ=9月30日午前、大阪市此花区(柿平博文撮影)

 ただ、ANAホールディングスなどが2027年度以降に、乗客を有償で乗せるエアタクシーの運行を目指している。各地で本格的に運用されるようになれば、時間短縮や交通渋滞解消のほか、災害時の緊急輸送など幅広い活用が想定される。

 日本総合研究所関西経済研究センターの藤山光雄所長は「万博では、新しい技術やサービスについて半年にわたり実証実験し、具体的なデータや課題を多く集積できた」と評価。そのうえで「万博の交通インフラを安心・安全に実用化できるよう、会期中に得られた成果や課題を分析し、自治体や関係機関が連携を密にして事業を進めていくべきだ」とした。(石橋明日佳)

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