電車運行の安全性向上を目指し、京阪ホールディングス(HD)と京阪電気鉄道はIT企業2社と協力して、道路上に敷設された大津線の併用軌道でAI(人工知能)技術を活用した運転支援システムの実証実験を行う。運転台に設置したカメラの映像をAIが画像解析し、危険な状況を検知、運転士に知らせる。有効性が確認できれば、大津線車両へのシステム導入を検討するとしている。
京阪HDと京阪電鉄が実施した「京阪電車事業共創チャレンジ2025」の募集テーマ「地域交通の安全性・定時性確保を目指した併用軌道の安全性の向上」に、自動認識技術・画像処理技術を研究・開発している「ビーコア」(東京)とロボティクスを活用したシステム設計・開発を手掛ける「Various Robotics」(東京)の2社から応募があり、採択。今回の実証実験につながった。
大津線は、京津線の上栄町駅―びわ湖浜大津駅と、石山坂本線の三井寺駅―びわ湖浜大津駅の区間に併用軌道がある。
京阪電鉄によると、併用軌道では、軌道上に自動車や歩行者が進入する可能性がある。運転士は走行中、常に細心の注意を払う必要があり、心理的負担となっているという。実証実験は、こうした運転士の負担を軽減し、運行の安全性向上を目指す狙いがある。
実証実験では、先頭車両の運転台に取り付けるカメラの映像を、車両に搭載するコンピューターでAI解析。道路上を通行する車や自転車、歩行者の危険な状況のほか、信号機の状態を自動検知し、運転士に音声や警告ランプで知らせ、安全な運行をサポートする。
顔認証や顔画像の抽出はせず、実証実験で取得・解析した映像データは、京阪HDと京阪電鉄、ビーコア、Various Roboticsのみが扱う。警察などから法令に基づく開示要請があった場合を除き、第三者への提供はしないとしている。
実証実験の実施期間は来年3月末までの予定。京阪電鉄の担当者は「運転士の心理的負担が小さくなるシステム開発につなげていきたい」と話している。
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