三菱商事や東京ガス、e―メタンの米事業から撤退 日本の再エネ戦略に採算性の壁
各社は米国の別の地域やカナダで製造事業を進めるが、日本の再エネ戦略は採算性の壁に阻まれている。
三菱商事、東京ガス、東邦ガスなどが11月、米ルイジアナ州で計画していた脱炭素型の都市ガス燃料「e―メタン(合成メタン)」の製造事業から撤退した。トランプ政権が再生可能エネルギーに対する補助金政策を見直したことや、世界的なインフレが影響したとみられる。各社は米国の別の地域やカナダで製造事業を進めるが、日本の再エネ戦略は採算性の壁に阻まれている。
水素の製造コストかさむ
三菱商事や東京ガスなどが米企業と進めていた事業は、ルイジアナ州の「キャメロン液化天然ガス(LNG)基地」周辺で2030年に年間13万トンのe―メタンを製造し、LNGに加工して日本に輸出する計画だった。バイデン前政権下の22年に検討が始まり、23年に基本合意した。
日本政府は、30年度に国内の都市ガスの1%をe―メタンやバイオガスに置き換える計画で、同事業は旗艦プロジェクトとして位置付けられていた。
課題になったのが、製造コストの大半を占める水素だ。e―メタンは工場や発電所から排出された二酸化炭素(CO2)と水素を反応させて作る。水素は水を電気分解して作るなど、環境に配慮した手法をとるため、コストがかかる。東京ガスは撤退の原因を「インフレなどによるコスト上昇」としており、水素の製造コストがかさんだとみられる。
さらに、バイデン前政権下で導入された再生可能エネルギー拡大に向けた税額控除や補助金が、トランプ政権で大幅に縮小されたことも影響したようだ。
カナダで新規事業に着手
一方、東京ガスは今月2日、新たにカナダでe―メタンの製造事業に着手すると発表した。中部マニトバ州で現地企業と協業し、e―メタンを製造する。東京ガスは「カナダは相対的にインフレの影響が少ない」と説明。30年度内に年間約3万トンの製造を目指す。
大阪ガスも2日、仏トタルエナジーズの米子会社や東邦ガス、伊藤忠商事などと米ネブラスカ州でe―メタンを製造する共同開発契約を結んだと発表した。ネブラスカ州の発電コストが比較的安いことが決め手となったとみられる。
日本政府が2月に決定した第7次エネルギー基本計画は50年の都市ガスの脱炭素化を掲げており、e―メタンは重要なエネルギー源の一つだ。東京ガスは「e―メタンに対する取り組み姿勢は変えていない」と強調する。(織田淳嗣)
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