地銀の独自キャラは「救世主」となるか 人口減、ネット銀の台頭で進む預金争奪戦の裏側
銀行のキャラクターが活躍の幅を広げている。ブランディングや顧客接点の強化に向け、戦略的にキャラクターを起用する銀行が増え、お堅い金融機関のイメージを払拭しようと「広告塔」として奮闘する。
銀行のキャラクターが活躍の幅を広げている。ブランディングや顧客接点の強化に向け、戦略的にキャラクターを起用する銀行が増え、お堅い金融機関のイメージを払拭しようと「広告塔」として奮闘する。とりわけ地方銀行は、地域人口の減少やネット銀行の台頭で預金獲得競争が激しくなり、経営環境は厳しさを増す。本業の金融事業以外の取り組みも増えており、銀行のビジネスは大きな岐路を迎えている。
好循環に期待
11月下旬、福岡県の観光地、太宰府天満宮の参道で、西日本シティ銀行(福岡市)の公式キャラクター「ワンク」がデザインされたどら焼きやプリンの販売が始まった。
ワンクは犬のマスコットで、黒や白のシンプルなデザインが特徴。もともとキャッシュカードに描かれ、顧客プレゼントのイラストとして活用されていたが、同行は地域活性化などを目的に、地元事業者とワンクを活用した商品の共同開発を企画。事業者を募集し、和菓子製造販売の「天山」(同県太宰府市)など4社を選んだ。
事業者からワンクの使用料を受け取り、対価は社会福祉団体などに寄付する仕組みで、天山の江口義浩社長は「若い人やインバウンド(訪日外国人客)に受け入れられる商品を開発したかった。ワンクの親しみやすいキャラクターは幅広い世代に受け入れてもらえる」と期待する。同行の小湊真美常務は「企業貢献や経済の活性化につながり、ワンクの知名度も上がる好循環が生まれる」と意義を語る。
挑戦の象徴に
従来銀行は、銀行法で業務範囲が制限され、物販や新商品開発に乗り出すには高いハードルがあったが、同行は金融庁と交渉し、令和4年に全国の銀行で初めて営利事業としてキャラクターのグッズ販売をスタート。自社開発や地元企業とのコラボで約30種類の商品が誕生し、同社は新事業に挑戦する象徴として、プロジェクトを推進する。
同行以外でも、顧客や地域住民との距離を縮めようと、多くの銀行が宣伝や地域イベントなどで積極的にキャラクターを活用している。滋賀銀行の「しがの助」は、琵琶湖の渡り鳥「コハクチョウ」がモチーフで、近江商人の子孫という設定。レッサーパンダを用いた広島銀行の「ひろくん」や、体の中にみんなの夢が詰まっているという福岡銀行の「ユーモ」など、個性もバラエティーに富む。
新たな取り組みは大手銀行でもみられ、りそなホールディングス(HD)は5年、公式キャラクター「りそにゃ」のグッズやLINE(ライン)スタンプを期間限定で販売した。利益は全額、グループの公益財団法人に寄付し、一人親家庭の支援事業に充てた。
りそにゃは、平成29年の「ゆるキャラグランプリ」企業・その他部門で1位を獲得。広報担当者は「従来の金融サービスの枠にとどまらず、地域貢献のためさまざまな挑戦をしていきたい」と話す。
新事業広がる
銀行がブランディングや新たな取り組みを強化する背景には、他行などとの競争環境の激化がある。従来銀行は、預金と貸し出しの金利差で収益を上げていたが、日銀のマイナス金利政策などで業績が悪化。ネット銀行などの台頭もあり、従来のビジネスモデルの転換を余儀なくされている。
令和3年の銀行法改正で業務範囲が拡大されたことを受け、ビジネスマッチングや、企業へのデジタル支援、人材派遣業など、新事業に乗り出す銀行も増加した。日本総合研究所調査部の大嶋秀雄・主任研究員は「これまで地銀や信用金庫は、同じエリアの地域金融機関と戦っていたが、若者を中心にネット銀行の支持が広がり、競争相手は増えている」と指摘。近年の金利上昇や業績改善によって、競争環境は一層激化しているといい、「預金者の獲得に向け、顧客接点の強化を早急に行う必要がある。キャッシュレスが進み、銀行に行かない人も増えており、キャラクターを広告塔として育てていくことは、顧客獲得へのアプローチになる」とみている。(一居真由子)
copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.

