研究者が「副業」で企業支援 新しい産学ネットワークを構築、ベンチャーのアークレブ
大学の研究者が自身の専門性を生かし、企業の研究開発に「副業」という形で関わる−。こうした新しい産学連携の形を広げようと、ベンチャーのアークレブ(東京都港区)が研究者と企業を結ぶ取り組みを進めている。企業が研究者の知見を活用してイノベーションにつなげるとともに、研究者が成果を社会に還元する機会を広げる狙いだ。
大学の研究者が自身の専門性を生かし、企業の研究開発に「副業」という形で関わる−。こうした新しい産学連携の形を広げようと、ベンチャーのアークレブ(東京都港区)が研究者と企業を結ぶ取り組みを進めている。企業が研究者の知見を活用してイノベーションにつなげるとともに、研究者が成果を社会に還元する機会を広げる狙いだ。
クライアント40社超
令和元年に創業したアークレブは、企業の研究課題やニーズに応じて、国内外で活躍する研究者をマッチングし、プロジェクトチーム(PT)を作る仕組みを整えた。
企業側からは、新規事業につながるアイデアの種を探ったり、自社にノウハウがない最先端技術の動向を把握したりする目的の相談が多いという。また研究開発に向けたテーマ設定やデータ分析の方向を検討するために、研究者に助言や調査を依頼するケースもある。
クライアント企業は、日本たばこ産業(JT)やアサヒグループホールディングスなど40社以上に上る。
研究者は国立を含む大学や研究機関に籍を置いたまま、副業として週末などの時間を活用してプロジェクトに参加する。研究者が得られる収入は1年契約なら1千万円程度になるという。
足りない共同研究費
文部科学省の調査によると、民間企業と大学などが共に取り組む共同研究による研究費受入額の平均は、6年度に1件当たり約332万円だった。
アークレブ社長で慶応大特任教授の浅井誠さんは「200万〜300万円では、新たに人を雇うのにも足りない」と指摘する。企業側の期待と研究者側の関心をうまく調整できず、ただでさえ研究や教育、事務処理に追われる研究者をさらに疲弊させてしまう状況もあった。
産学連携を推進するため、浅井さんらは「まずは研究者のインセンティブをしっかり作る」ことを考えた。金銭面だけでなく、自分の知識や経験が評価されることは、研究者らの意欲向上につながる。
その上で浅井さんは「クライアントである産業界にも喜んで使ってもらえている」と胸を張る。
6年には三菱地所から業務を受託。脱炭素社会の実現に向け、気候変動分野の技術的な課題解決に取り組むスタートアップ企業を支援する施設「0 Club」(ゼロクラブ、千代田区)の運営に関わっている。
入居する企業の選定に携わるほか、それら企業の研究開発を促進するため、大学などの研究人材の活用を後押ししている。気候変動分野で世界的に著名な研究者の拠点も誘致し、国内外から人材が集まるハブとして存在感を高めているという。
2万人の人脈形成
浅井さんが研究者を取り巻く課題を意識するようになったのは、米コロンビア大で研究者をしていた平成25年頃に遡(さかのぼ)る。
研究者に十分な光が当たらない日本とは対照的に、米国では強烈な光が当たる一方で影も色濃かった。世界中から優秀な若者が集まり、激しい競争に さらされていた。大きな成功を収める人もいれば、夢破れて祖国に帰る人も少なくない。研究者が使い捨てのように扱われる現実も目の当たりにした。
こうした中、ニューヨーク近郊の理系研究者を中心に、研究やキャリアの悩みを語り合う場を作った。このとき築いた約2万人に及ぶ研究者ネットワークが、アークレブの創業にもつながった。
環境問題など地球規模の課題の解決に向け、社会が科学を推進していくには研究者の存在が不可欠のはずだ。それなのに、「あまりにも報われない。研 究者の存在が、正しく社会に実装できていないのではないか」と浅井さん。
欧米にも課題があるが、ひと際、状況が深刻な日本から「産学連携の新しい形を生み出し、世界にも広げていきたい」と意気込む。
研究者の副業をきっかけに、産業界と大学・研究機関がタッグを組むことの価値を双方に実感してもらい、従来型の産学連携でのより良い関係構築や、イノベーション創出につなげたいとしている。(松田麻希)
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