トラック物流に「黄信号」 運転手不足が加速 完全自動運転は道半ば 見えた有力手段とは
インターネット通販の拡大で輸送の需要が増え続ける一方、運送業界では主力のトラックによる物流が持続できない恐れが出ている。政府は2030年度にトラック運転手が約21万人不足すると推計し、中東情勢を受けたガソリン代高騰も追い打ちをかける。物流業界は自動運転の導入を目指し、システムに運転の一部を任せられる段階まで来たが、完全な実用化には技術の推進や安全性の確保が課題となる。
インターネット通販の拡大で輸送の需要が増え続ける一方、物流の主力であるトラックによる輸送が持続できない恐れが出ている。政府は2030年度にトラック運転手が約21万人不足すると推計し、中東情勢を受けたガソリン代高騰も追い打ちをかける。物流業界は自動運転の導入を目指し、システムに運転の一部を任せられる段階まで来たが、完全な実用化には技術の推進や安全性の確保が課題となる。
政府のまとめでは、トラック運転手の就業者数は1995年の98万人をピークに減少傾向となり、2020年には77万9千人まで落ち込んだ。運転手不足はさらに深刻化し、20年度の約4万人から30年度には21万人超が不足する見込みだ。
国土交通省によると、宅配便取扱個数は10年連続で過去最多を更新し、24年度に50億個を超えた。ネット通販の拡大が主な要因で、需要は伸び続けるとみられている。
運送業界は対策として自動運転の実用化を推進。高市早苗内閣が昨年決定した総合経済対策でも「高速道路における自動運転トラック導入や、自動運転サービス支援道の実装に向けた取り組み」が盛り込まれた。
ネスレ日本と自動運転システム開発のT2(東京)は昨年12月、自動運転のトラックにネスレの商品を載せ、高速道路上を輸送する実証実験を始めた。運転手が乗って部分的に自動運転を行う「レベル2」の段階での安全性や定時性を検証。ネスレの姫路工場(兵庫県姫路市)から千葉県野田市の物流拠点間のうち約430キロなど2区間をレベル2で走行する。
ネスレのオリビエ・モントゥ常務執行役員は、運転手不足への対応が課題だと説明し「安定的に商品を届けられるよう、新しい運び方の実現へ歩みを進める」と話した。
自動運転のレベルは、自動運転のない0から、システムが完全に自動運転を行う5までの6段階がある。レベル4は、あらかじめ定めたエリアやルート内で遠隔監視付きの無人運転が可能となることから、物流での実用化が期待されている。
政府は、レベル4について27年度に100カ所以上での実現を目指すが、レベル5の完全な実用化の時期は未定だ。
海外では、米グーグル親会社アルファベット傘下のウェイモなどがレベル4のタクシーを走らせ、商用化で先行。ウェイモは人間ドライバー比で「重傷以上の事故」が91%減少したと安全性を強調するが、自動運転車が関わる事故やトラブルは根絶できていない。
日本では23年施行の改正道路交通法で、レベル4にあたる「特定自動運行」が許可制で制度化された。事業者ごとに運行範囲などを定めた計画の認可が必要となり、遠隔監視者の配置も義務づけられる。事故時の責任や走行データと個人情報の扱いなど課題は多い。
コスト面では、運転手の給与は削減できるものの、自動運転の車両は高性能カメラや人工知能(AI)システムの設置などで通常の車両よりも高額となる。遠隔監視センターの運用費もかかるため、自動運転を活用しながら運転手を最小限配置する「ハイブリッド物流」が有力視されている。(田村慶子、桑島浩任)
鉄道4% 輸送分担進まず
輸送手段をトラックから鉄道や船舶に切り替える「モーダルシフト」が注目されている。背景には、残業規制の強化でトラック運転手が不足する「2024年問題」などへの対応がある。だが、自然災害による輸送障害の懸念もあり鉄道の割合は約4%と低調だ。
国土交通省が作成した貨物鉄道へのモーダルシフト推進に関する資料では、鉄道について「定時性に優れた効率的な大量輸送機関」と評価。全国にネットワークがあり、中長距離輸送の手段として適していることから活用が必要だとした。二酸化炭素排出量がトラックと比べて大幅に低いことも利点として挙げる。
政府は鉄道輸送の導入企業への補助事業も実施しているが、荷主や運送会社の動きは鈍い。荷物をトラックから鉄道に載せ、鉄道の到着地からトラックに積み替える手間や時間がネックとなるほか、日本では短中距離輸送が中心のため、長距離でこそ発揮される鉄道輸送のメリットが薄れることなどが要因だ。
国交省は、鉄道は自然災害で大規模な輸送障害がたびたび発生し、荷主の信頼が低下しているとも指摘。トラックや船舶、航空などの輸送機関別分担率で鉄道は4%台で横ばいとなっている。
推進に向け、トラックから鉄道への載せ替えが容易なコンテナの活用のほか、災害時の代替輸送の拠点駅強化、トラック・船舶による代行輸送体制の構築が求められる。
一方、近年はドローンによる輸送も検討されている。ただ、現状では技術開発が途上で積載量や航続距離が限られることなどから、本格的な導入には至っていない。(井上浩平)
「関西でより深刻化」 日本総合研究所関西経済研究センター所長 藤山光雄氏
トラックによる物流の問題は、首都圏よりも人手不足が進んでいる関西などの地方で深刻化する可能性が高い。
関西には大都市もあるが、都市部から離れた過疎地域も多い。物流業者はそうした地域まで長距離を運ぶ必要があるため、大量輸送で利潤を得やすくする「規模の経済」の実現は難しい。
関西では製造業などに占める中小企業の割合が高いことも、物流業者にはマイナスの要因となる。物流業界は、人手不足だからこそ賃上げを行って運転手などを確保する必要があるが、荷主となる企業の規模が小さいほど、賃上げの原資となる運送コストの増大が負担となるからだ。
大阪・関西万博でも実証実験が行われた自動運転の実用化は、人手不足の対策として有効だ。高速道路などの決まったルートであれば、技術的にはハードルは高くない。今後の規制緩和と技術開発の両輪での進展が期待される。(聞き手 黒川信雄)
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