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「DXからAXへ」──AIエージェントで企業の働き方と経営はどう変わるのか?ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

一部の自動化にとどまるDXから、AIが自律的に思考し業務を完結させる「AX」へ。Algomatic齋藤氏が実事例や推進の壁の突破口を交え、数年後の圧倒的格差を防ぐ「AIネイティブ企業」へ向けた、業務・組織・システム変革とトップダウンの重要性を解説します。

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 生成AIの普及速度は、かつてのインターネット革命すらしのぐ勢いだ。ChatGPTは2022年末の登場からわずか2カ月で1億ユーザーを突破した。インターネットが同じ規模に達するのに7年を要したことと比べれば、その速度差は40倍以上にのぼる。「この変化は連続的ではなく、指数的なものだ」──そう語るのは、生成AI領域に特化したスタートアップ、Algomaticで教育研修事業責任者を務める齋藤皓太氏だ。

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 2026年2月のITmediaエグゼクティブ勉強会では、「そのDX、まだ"人が頑張る前提"ですか?──AIエージェント時代の経営戦略で会社はどう変わるのか」をテーマに、齋藤氏が講演した。東京大学工学部卒業後、IT・プログラミング教育事業の責任者として延べ1万人以上の受講生を輩出し、現在はAlgomaticで200社超の企業のAI変革を支援している齋藤氏が、現場で見えてきた成功と失敗の両面から、AIエージェント時代の経営戦略を解き明かした。

DXとAXは何が違うのか

 従来のDXが「作業の一部をシステムに代替させること」をスコープとしていたのに対し、AX(AI Transformation:AI変革)は「特定の作業フロー全体をend-to-endで自動化する変革」だと齋藤氏は定義する。

 その違いを際立たせるのが、生成AIが獲得した「思考する能力」だろう。従来のAIは「この画像は犬か、猫か」を判断する特化型で、その操作にはエンジニアによるプログラミングが前提だった。これに対し生成AIは、日本語や英語といった自然言語での指示に応じ、文字を理解して文字を生み出せる。「雨だから傘を持とう」のように前提状況から次の行動を導き出せるようになった「思考に近い能力」が、AIエージェントという概念の土台を作っている。

 「従来のDXはRPAなどで作業の一部は自動化できても、情報を統合して新しいアウトプットを生み出す文面作成や、複雑な判断を伴う返信対応には、結局人の手が残り続けていました」と齋藤氏は振り返る。「AIエージェントはその思考・判断も含めて自動化できる。最初から最後までAIがやってくれる世界が来ています」。

 従来のチャット型AIは「人が指示し、AIが応対する」受動的な対話に留まっていた。AIエージェントはゴールを伝えるだけで、必要な情報収集から整理・出力まで自律的に動く。主体が人からAIへと移行しつつあるのが、いまの変化の本質といえそうだ。

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 この変化を後押しした背景に「スケーリング則」がある。AIモデルのパラメータ数や学習データ量が増えるほど知性は青天井に向上し続けるという学術上の法則で、OpenAIがこの法則を愚直に信じ続けてモデルを大きくした結果、2022年末にChatGPTが閾値を超えた。「この先もずっと賢くなり続けるわけですから、私たちの知性が追いつかない時代が来るかもしれない。だからこそAIに期待をし、使い続けることでその恩恵はさらに増大していくだろう。」と齋藤氏は見る。

現場で動く4つのAIエージェント事例

 講演では、Algomaticが実際に手がけた事例が紹介された。

 まず営業AIエージェント「アポドリ」だ。企業リストを渡すだけで、各社の公開情報をもとに関連部署の担当者までリサーチし、さらにその人物に対してどのチャネルで接触可能かを特定。ターゲットごとに最適化されたメール文面を生成してアプローチまで実行する。「従来は1通あたり15分ほど要していたメール作成業務が、アポドリの活用により、10分足らずで数十通分のアウトプット生成へと転換されています。送信前の承認ステップは人間が担いながらも、リストの受領からアポイントメント獲得までのプロセス全体を自動化しています。」と齋藤氏は説明する。

資料2

 次が小売・飲食チェーン向けの「店長AIエージェント」だ。導入企業では本来の接客・店舗戦略業務ではなく、週報作成や発注、シフト調整といったバックヤード業務に店長の時間の約8割が費やされていた。このエージェントは、過去の売上データや天候情報をもとに発注量を予測・提案し、シフト表を自動作成する。店長はチェック・承認に集中できる体制に変わり、「1人の店長が複数店舗を持てるようなチャレンジが進んでいます。コストインパクトは非常に大きいものになると思います」と齋藤氏は語る。現在、各店舗で実証実験が進んでおり、店長の業務量は半減に近づいているという。

 製造・建設現場向けには、多言語対応の安全管理AIを開発している。外国人労働者の増加により、朝礼でのヒヤリハット情報共有が形骸化していたという課題に対し、現場写真をエージェントに送ると危険箇所を自動抽出して危険度・理由・対応方法を整理し、英語・タガログ語・中国語など多言語で音声出力する仕組みを構築した。

 さらにシステム開発の領域では、要件定義から設計・開発・保守・運用まで工程全体をAIエージェントが担う「AI-DevOps構想」の実証が始まっている。会議のURLにAIを招いて要件定義のミーティングを文字起こしで読み込ませ、基本設計書から詳細設計書・テスト仕様書を一気通貫で生成し、そこからコードを自動生成して動くアプリケーションを生み出す。「PoCやアジャイル開発においては、開発速度が数倍から数十倍に高まることも期待できます」。

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