本物いるのになぜ あえて動物のロボ化に挑む動物園 テックとリアルの融合でみすえる未来
本物が目の前にいるのになぜあえて「ロボット」を作るのか−。ジャイアントパンダがいなくなった和歌山県白浜町の人気レジャー施設「アドベンチャーワールド(AW)」で、有志の社員による動物ロボットの製作が注目を集めている。パンダの飼育繁殖が昨年6月まで行われ、サファリワールドなどで約120種1600頭を飼育する同施設で、動物の「ロボ化」に挑む真意とは何か?(小泉一敏、写真も)
本物が目の前にいるのになぜあえて「ロボット」を作るのか−。ジャイアントパンダがいなくなった和歌山県白浜町の人気レジャー施設「アドベンチャーワールド(AW)」で、有志の社員による動物ロボットの製作が注目を集めている。パンダの飼育繁殖が昨年6月まで行われ、サファリワールドなどで約120種1600頭を飼育する同施設で、動物の「ロボ化」に挑む真意とは何か?
「本物みたい、かわいい」
5月10日午前、AW施設内の「センタードーム」に設置された簡易プール前で多くの家族連れから歓声が上がった。視線の先では「ジェンツーペンギン」と「イワトビペンギン」の形をした2体の動物ロボットが羽根を動かし、脚で器用に方向を調整しながら気持ちよさそうに泳いでいた。ときおり口を開け、愛嬌(あいきょう)まで振りまいた。
最初は少し怖がっていた子供たちも興味深そうな様子でプールの端から手を伸ばしてロボットに触れ笑みを浮かべた。
動物ロボットの製作に取り組むAW運営会社の公式サークル「ココロボ」でリーダーを務めるAWパークディレクション課の岡田育磨さん(33)は「ロボットを見た時の最初の違和感や驚き、ワクワクをまずは感じてほしい」と話す。
ココロボは、大学時代に目にした動物ロボをきっかけに興味を持ったという岡田さんが平成28年の入社から3年後に立ち上げた。これまでペンギンのほか、ウミガメやジンベエザメ、カツオなど十数種類のロボットを製作。メンバーは岡田さんを含め5人で、AW施設内のイベントに出展するほか、小学校での出前授業や福祉施設などでロボット体験を行っている。
驚くべきは、その精巧さだ。ペンギンロボット表面の素材は、ウエットスーツと同じ合成ゴム「ネオプレーン」を使用。ペンギンの羽根を再現するため、特製の塗料を塗った上で表面につまようじで切り込みを入れ筋の模様をつけ細やかな凹凸を表現している。
ペンギンの動きは施設職員である利点を生かし、日々の生態観察を基にアレンジを加えて製作。モーター駆動で、ラジコン無線により操作する。製作や修理は岡田さんが担当し、他のメンバーがイベントの企画や運営などを手伝う。
ロボットと同じ種のペンギンを飼育する同施設で、ロボットを製作する必要性とは何か。
岡田さんは「もちろん生きた動物を見てもらうことが望ましい」としつつ、ロボットは動物園外で活動できるなど場所を選ばないため、動物への関心をより高める上で補完的な役割を期待していると解説する。
さらに飼育動物の暮らしやすさを重視した動物福祉への配慮もある。岡田さんは「動物園の役割は、動物の幸福を追求しながら人の好奇心に応えていくこと」といい、負担になりやすい動物との接触の機会を代替するなど「人の好奇心と動物の幸福追求の間を補う存在として活用できるのではないか」とみる。
ココロボは、令和5年に社内のビジネスコンテストで入賞したのを機に、入賞で得た資金を使い活動を本格化。昨年11月には、和歌山県有田川町で約7200万年前の地層から発見された新属新種の水生爬虫(はちゅう)類「モササウルス」(愛称ワカヤマソウリュウ)の復元骨格などを基に専門家らの協力を得てロボットを製作。イベントなどで泳ぎを披露した。
2025年大阪・関西万博でも、大阪府阪南市と協力し、同市の出展ブースに参加。製作した同市名産のサワラのロボットを国際的な場でアピールするなど活動の幅を広げている。
岡田さんは「まだ動物ロボットの存在を提案している段階。動物ロボットの存在に『意味がある』と多くの人に受け入れてもらえるよう活動を続けたい」と話した。
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